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正直、これほどまでとは思ってなかった。
「はぁ…」
一人帰路につきながら先ほどの出来事を思い出したらため息が自然と漏れてしまう。恋愛音痴な自覚はあった。
というのも、私は幼少期から武士道精神を叩き込まれ、毎日稽古に励んでいたせいかそういう色恋沙汰には全く縁がなかった。そもそも放課後や休日は稽古の時間に充てていたため、友達と遊んだりすることだって少なかった。
それでも稽古を苦だと思ってはいないし投げ出したことだってない、だって自分で決めたことだから。
私に当時の記憶はないけれど、犬塚家に女の子として生まれた私は当初跡継ぎにならないとされていたらしい。男の子が継ぐべきっていうのはよくある話だと思う。
しかし私が3才の頃、母が少し目を離した隙に道場に迷い込んだ私は、稽古をする父を見て言ったらしいのだ。『やりたい』と。
この話を両親に聞かされたときも、やっぱり幼い頃の出来事は覚えていなくてピンとこなくて。それでも現に私は物心ついてから今まで辞めたいと思ったことは一度もない。
その出来事以降、父は徐々に私に犬塚家の教えや武士道精神を教えるようになった。そして道場である我が家で剣道をはじめ、柔道、空手道、少林寺拳法等の武道や護身術を日々稽古してもらい今に至る。
何度も言うが私は辞めたいと思ったことは一度もない。
一度もない、けれどやはり興味を持ってしまうのだ。
「恋、してみたいなぁ…」
無意識に呟いてからハッとして周りを見渡す。うん、誰もいない。こんなこと言ってるところを人に見られようものなら恥ずか死ぬ。穴を掘って埋まりたい。
犬塚家の一員である前に私も年頃の女の子なわけで、そりゃ興味がないと言えば嘘になる。
普通の女の子みたいにオシャレしてお出かけしたり、プリクラ撮ったり、恋したり。
ハルちゃんはすごいなぁ。好きな人がいて、まして告白するなんてどれだけ勇気がいるんだろう。
「って！私は好きな人の前に主君を見つけるのが先！」
浮ついた思考を叱責するように自分の頬を両手でパチンと叩く。これから家に着いたら稽古だというのに、こんな雑念だらけでは身も入らない！
身を引き締める思いで叩いた頬は思ったよりヒリヒリと痛み冷たい風が沁みた。
自室の押入れの奥にこっそり買った少女漫画を隠して、夜な夜な読みふけってるのは誰にも内緒。
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さかさま(プロフ) - まぶぴちょこさん» わー！とても嬉しいお言葉です！励みになります！ありがとうございます^^ (2021年12月29日 16時) (
レス) id: 24f9a11766 (このIDを非表示/違反報告)
まぶぴちょこ(プロフ) - この話めちゃくちゃ好きです！！続き楽しみにしています！更新頑張ってください！ (2021年12月29日 9時) (レス) @page45 id: 045921842f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さかさま | 作成日時：2021年12月24日 17時
