39 ページ40
「お役に立てるよう頑張ります。よろしくお願いします」
深々と礼をすると、死柄木さんはまたふわりと頭を撫でてくれた。嬉しくて顔がにやけてしまう。お辞儀しててよかった。
「お前、家出てきたんだろ」
すると死柄木さんは私の傍にあるキャリーバッグに視線を移した。そうだ、忘れてた。
「あぁこれは…えっと、死柄木さんの個性って粉々にするやつですよね？これもできます？」
「はぁ？…できるけど」
やってもいいのかと言わんばかりの表情で困惑する死柄木さん。いいんだ、これは。
「親には合宿行くって言って出てきたのでカモフラージュでもあるんですけど、中に私の今までの宝物を入れてきたんです」
雄英の制服をはじめ、家族写真やお気に入りの本、幼なじみたちがくれた犬のマスコット、子供の頃に描いた家族の似顔絵。
全部大切。
全部宝物。
だからこそ、今ここで全て壊す。
自分を追い詰めるために。
自らの覚悟を推し量るように。
「もう後戻りはできないようにしようと思って」
「…いいのか」
「はい」
私の返事を聞いて、死柄木さんはキャリーバッグに触れた。五指が触れた瞬間からぼろぼろと崩れはじめ、あっという間に全てが塵になった。
「…すごい」
こんな個性見たことがない。正直私の個性は没個性というか、動物系はありふれているから珍しい個性につい感嘆の声が漏れていた。
「間違っても俺の手に触るな。俺の個性はコントロールが効かない」
注意喚起のために言ってくれたであろうその言葉に、少し寂しさを覚えた。この個性のせいで彼は人の温もりに触れる機会が少なかったのだろうと思うと胸が締まる。
「…そんな悲しいこと言わないでください。私死柄木さんに撫でてもらえたときすごく安心して嬉しかったんですよ」
先を行く彼の手が寂しそうに見えてしまって、その手を取らずにはいられなかった。
「っ！おい、言ったそばから…」
「五指に触れなければいいんですよね？」
「間違って触れたらどうする」
「気をつけるから大丈夫です！」
「…あぁそう」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 323人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さかさま(プロフ) - まぶぴちょこさん» わー！とても嬉しいお言葉です！励みになります！ありがとうございます^^ (2021年12月29日 16時) (
レス) id: 24f9a11766 (このIDを非表示/違反報告)
まぶぴちょこ(プロフ) - この話めちゃくちゃ好きです！！続き楽しみにしています！更新頑張ってください！ (2021年12月29日 9時) (レス) @page45 id: 045921842f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さかさま | 作成日時：2021年12月24日 17時
