知られていた ページ14
少し着込むくらいで平気な雪原だ。厚いケープが風に揺れる。植木鉢で歩きにくそうにしていたパックンを抱えて歩く。
キーラ《そいつ、重くないのか?》
『結構軽いです。パックン大丈夫?』
刺さらないように葉っぱを内側にしまってくれているパックンが、口を結んでAの頬に口付ける。思いのほか柔らかい唇に心が暖まるのを感じた。
『ん?あれって』
雪を被った岩の隙間に、2つの小さな影を見つける。それは見慣れたシャツを着て、寒そうに震えていた。
『リュカ、ネス?』
リュカ「あ…Aさん?」
ネス「A…寒いよう」
この寒さでシャツ一枚は子供なら尚更厳しい。パックンをその場に置いて駆け寄った。彼らの目は金色で、体からも邪悪な空気が漂っているがこんなに弱々しい子供相手に戦える訳が無い。
『そんな薄着じゃ凍えるよ…これでも羽織ってっ!』
ケープを脱いで彼らに掛けようとしたとき、腹を激痛が襲った。ビリビリしていて身体中の自由を奪い、手の中のケープは虚しく落ちた。
『かっ!』
ネス「…あは、Aって優しいよね。こんな怪しい僕たちに近づいちゃうなんて」
リュカ「主から聞きました。貴女に抱き締められると戦えなくなるって」
横向きに倒れ込んだAを見下ろして目を更にぎらぎらさせる2人。やはり彼らは「主」の手下だ。下手に出るべきでは無かった。ネスが腰の辺りを足で押して仰向けにされる。上に乗られて彼は二本指を掲げた。
ネス「僕たちが君を殺してあげるよ。そうすればこんなこと、しなくて済むでしょ?」
ああ、その主とやらは、あんなに純粋で強いこの子達をこんな風にしてしまったのか。力の入らない腕を何とか上げようとする。ネスが指を振り下ろした。しかしそれは叶わず、大きな口がネスの手を丸ごと飲み込んだ。
ネス「いっ!!たぁっ!」
『パックン!』
腕を咥えたまま首を180度回転させて雪原に放る。ネスは動きを止めてフィギュア化してしまった。痛みの収まった体を起こしてリュカを見ると、少しだけ震えて怯えた目をしていた。
リュカ「や…来ないで…!」
『…リュカは、もっと強いよ』
今度は何もされないように、素早く彼を抱きしめる。う…と聞こえた唸り声が、悲しく耳元で響いた。
ダーズ《貴様にしては頑張ったな。…まぁ、最初に騙されるところには嘲笑してしまったが》
『仕方ないじゃないですか…信頼している人が、困っていたら無理ですよ』
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粗大ゴミ(プロフ) - 青い氷さん» コメントありがとうございます!こんな妄想の垂れ流しを褒めてくださるなんて嬉しいです…!拙い駄文ですがゆっくり投稿していきますので是非最後までお付き合い下さい(*^^*) (2022年8月13日 15時) (レス) id: fd182a523e (このIDを非表示/違反報告)
青い氷(プロフ) - すごく面白いです!更新頑張ってください!!応援してます! (2022年8月11日 21時) (レス) id: 76e242a4de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:粗大ゴミ | 作成日時:2022年6月16日 1時