トマトスープ ページ13
Aの腹が赤く染まる。柱の瓦礫と共に倒れた体から、赤い液体が流れ落ちた。キーラはガノンドロフをぺしぺしと叩く。
キーラ「くそっ私に力があればこんな奴…!」
だとしても、一度敗北したファイターという存在に勝てることは無いだろう。と心の奥底では半ば諦めていたキーラが呆気なく弾き飛ばされる。
キーラ「うおっ!」
Aの上に落ちたキーラ。動かないAを心配してか否か、その腹を小さな羽でなぞった。
キーラ「…?」
付着した液体に違和感を覚える。香ばしい香りがして、Aの顔を見ると少しだけ口角を上げているではないか。察したキーラがAの体に戻る。近づいてきたガノンドロフが、赤い体を見て満足気ににやりと笑う。
ガノン「なんだ大したこと…」
ガシッと伸ばされたガノンドロフの腕が掴まれる。それは紛れもなくAの手であり、腕を軸にして起き上がる。突然のことに行動がワンテンポ遅れて、ガノンドロフはそのまま抱擁を受けた。
ガノン「ば!馬鹿…な」
目を開けると鈍い光は既に収まっていて、逞しい体がカチカチになってそこにいた。腹の赤い液体をひとつなぞって匂いを嗅ぐ。
『確かに、近づかない限り臭わないな』
キーラ《流石だねA。トマトスープを利用するなんて》
『これに引っかかるかは正直運でしたが、上手くいって良かったです』
ダーズ《ともかくまた1人回収できたな。後はまた明日だ、早く寝ろ》
Aの身を案じてか就寝を施してきたダーズに拍子抜けする。今夜は暖かくなりそうだ。欠伸を一つしながら、寝室へ戻って行った。
〜〜〜〜〜〜〜
目を覚ますと、また声が聞こえてくる。自分の呼び掛けに反応してくれる彼らの存在は、Aにとってなくてはならないものになった。
キーラ《今日はどこに行こうか》
『そうですね、少し寒い所から攻めようかと』
ダーズ《準備は怠るな。途中で凍死でもされたら我らが生きられん》
今ではAの体がキーラとダーズの器。Aが死ねば、彼らも消滅する。例え彼らに野望が残っていたとしても、Aの体が無ければ生きられない。どちらにせよ、Aを守り、支えてやらねばならないのだ。
『よっと』
雪山なら登ったことがあるが、雪原は初めてだ。白い光景が広がる大地を、軽く踏みしめる。パックンも初めてのことにはしゃいで地面の雪に体ごと埋まっていた。
『寒いから程々にな!…にしても、枯れ木しかないなぁ』
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粗大ゴミ(プロフ) - 青い氷さん» コメントありがとうございます!こんな妄想の垂れ流しを褒めてくださるなんて嬉しいです…!拙い駄文ですがゆっくり投稿していきますので是非最後までお付き合い下さい(*^^*) (2022年8月13日 15時) (レス) id: fd182a523e (このIDを非表示/違反報告)
青い氷(プロフ) - すごく面白いです!更新頑張ってください!!応援してます! (2022年8月11日 21時) (レス) id: 76e242a4de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:粗大ゴミ | 作成日時:2022年6月16日 1時