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正確に言うと清水寺を模した場所なのだろう。修学旅行で一度だけ見ることが出来たこの景色。この世界でも見られると思っていなかったためか、じんわりと涙が滲んだ。
『…ほんとに、綺麗ですね。自分がいた世界にも、この景色がありのまま存在しているんですよ』
テリー「そうなんだな…ってA!?なんで泣いてるんだ!?」
『ごめんなさい、ごめんなさい…自分で選んでここに来たのに、故郷を懐かしむなんて野暮ですよね…!』
自分の存在は、現世の皆から消されている。そんなところに帰ったって何も変わらないだろうに…。懐かしんでいると認めてしまってからは嗚咽しか出せなくなっていた。縮こまるAの肩を、テリーはそっと抱き寄せる。いつものノースリーブスタイルではなく、ジャケットを着ていた彼の腕が背中を暖めた。
テリー「いいのさそれで。あんたはその世界のことも知っているし、このスマブラのことも知れている。役得じゃないか!二つの世界を経験できてるなんて!」
新参者の俺が言えたことじゃないけどな!と明るく付け足してくれたテリーの顔は、ライトアップの光に照らされて更に眩しかった。
テリー「それにほら、折角の服が汚れちまうぜ。今のあんた、最高に綺麗だな」
優しく笑ってくれたかと思うと、スっと顔を近づけて一瞬のキスを落とされる。思考停止したAは真っ赤な顔で彼を見上げた。
勇者「…テリー」
テリー「お?」
完全に二人きりの世界になってしまったところを壊したのは、勇者であった。テリーの背後にいる彼は、鋭い視線をテリーに向けていた。
勇者「何してる」
テリー「なぁに、Aとイチャついてただけだぜ」
勇者「キスしてただろ」
『ひっ!み、見てたんですか…』
勇者「マスターが宿を見つけてくれたから、行くよ」
Aに近付いて手を握ってきた勇者は、宿の方向へ歩き出す。慌てて時間を確認するともう10時前だった。大人しく着いてきたテリーも含めて帰路につく。その間もずっと勇者は手を握ったままだった。
『!』
少し指を絡めてきて、自然に恋人繋ぎの形をつくる。しかしこれが限界なようで、強く握りしめたまま顔を真っ赤に染めていた。
勇者「…また改めて、気持ちを伝えるから」
『は、はい…』
何故か素直に返事をしてしまったAを横目に、テリーが勇者の肩をバシバシ叩く。
テリー「精々頑張れよ!俺のものになるのは確定してるがな!」
勇者「痛いなぁもう…」
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粗大ゴミ(プロフ) - まどかさん» コメントありがとうございます!コンテンツに対しての熱と文才が落ちかけている作者ですが、そう言っていただけて嬉しいです! (9月11日 23時) (レス) id: fd182a523e (このIDを非表示/違反報告)
まどか - 亜空間の小説から見てこんなに面白く楽しいって思ったのは初めて… (8月30日 4時) (レス) @page50 id: b6ef9522e9 (このIDを非表示/違反報告)
粗大ゴミ(プロフ) - わらび餅さん» ありがとうございます!掛け持ちな上に飽き性ですが、ちまちまやっていこいと思います(*^^) (2021年10月7日 22時) (レス) id: fd182a523e (このIDを非表示/違反報告)
わらび餅 - 面白かったです。更新頑張ってください。 (2021年10月7日 17時) (レス) @page2 id: b4ce205d1c (このIDを非表示/違反報告)
粗大ゴミ(プロフ) - りなりんさん» りなりんさん!ありがとうございます!いい機会だったので即興で短編集を作成してしまいましたw楽しんでもらえて良かったです!こちらこそありがとうございました(*´∇`) (2021年10月7日 12時) (レス) id: fd182a523e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:粗大ゴミ | 作成日時:2021年10月7日 0時