これから ページ44
Naoto.K
岩ちゃんを連れて、奥の自販機ホールにやって来た。
ここはあまり人が来ない場所だから、何かとうってつけだ。
温かいカップドリンクを購入して、ソファーに座り込んだままの岩ちゃんに手渡す。
岩田「ありがとうございます……」
直人「どういたしまして」
俺は隣に座ると、診察室の中での話をした。
別に隠すことじゃない。
ただ、俺らも一緒だよってのを、知って欲しかった。
直人「俺らにできることなら、サポートするから。
岩ちゃんが忙しい時でも、できるだけあの子を見るよ」
岩田「ありがとうございます……」
いつも馬鹿やって明るい岩ちゃんが、ここまで沈んでいる。
それだけで、胸が痛くなる。
直人「岩ちゃん、今回の件さ、辛かったのはあの子だけじゃない。
岩ちゃんだって辛いと思う」
岩田「ははっ、優しいですねNAOTOさん」
直人「茶化すな」
笑って誤魔化そうとする岩ちゃんを、俺は止めた。
すると岩ちゃんは手元にあるドリンクを飲むと、肩の力を抜いた。
岩田「忙しかったなんて、言い訳にならない。
明らかに様子がおかしかったAに、もっと早く気づくべきでした」
直人「岩ちゃん……」
岩田「周りを気遣ってばっかで、本音を言葉にできないのなんて知ってた。
だから、いつも愚痴吐かしてたりしてたんです」
その光景を俺らは見たことがある。
あの子が休みを貰った時がそれだったんだろう。
岩田「守るって、誓ったのに……」
直人「岩ちゃんは、ちゃんと守ったよ。
玄関口でマネージャーと戦ってたんでしょ?
TAKAHIROくんから話は聞いてたから」
岩田「……」
直人「岩ちゃんは、ちゃんとあの子を守ったよ」
岩ちゃんは、息を吐き出しながら顔を隠した。
唇をキツく噛み締めて、声を出さないように小さく震えていた。
本当は、今にでもあの人を殴りたいはずなのに。
何もかもを押し殺してる岩ちゃんに、俺まで泣けてきた。
直人「岩ちゃんは、頑張ったよ」
そう言って俺は岩ちゃんを抱きしめた。
暫く二人で泣いて、泣いて、とにかく泣いて、吐き出して。
決して、浅くは無い傷を消毒して、
岩田「A、お待たせ」
『剛典くん……』
合流した。
登坂「NAOTOさん、岩ちゃん」
敬浩「……」
臣は立ち上がってこっちを見た。
TAKAHIROくんは何か気づいてると思うけど、何も言わなかった。
二人の将来は、これから始まる。
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作者名:雪乃 | 作成日時:2023年6月22日 19時