第32話【 再会 】 ページ32
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一度生まれた疑問は中々消えず。
気が付けば帰宅の時間。
寮へと戻った後も、夕食の時間もほぼ上の空状態だったA。
心配に思ったクラインに今日は早目に休む様に言われて部屋へと戻った。
自身の布団へと身を沈め、瞼を閉じる。
前にいた世界の事。今いる世界の事。頭の中でぐるぐると回る情報から目を背ける様に強く頬を叩く。
『 クソッ…、俺らしくねぇなぁ…。』
布団の上を駆け回るチビを抱き上げ、撫でる。
気持ち良さそうに鳴き声をあげるチビ。
『 お前は可愛いな…チビ。』
「 …キュウ? 」
『 何、慰めてくれてんの? 』
小さな舌でAの頬を舐めるチビ。
頭や鼻先をぐりぐりと押し付けてくる姿は本当に可愛い。
そんなチビの身体を腕の中へ閉じ込め、目を閉じる。
どの位の時間が経ったのか。
何かの気配を感じて目が覚めたA。
外は既に陽が沈んでおり、真っ暗な暗闇と淡い月の光だけがこの世界を包んでいた。
上のベッドではジェイルが眠っている為、彼を起こさない様にチビを連れて部屋を出る。
寮生が寝静まった廊下を歩き、教室へ続く扉とは別の扉を開き中庭へと足を踏み出す。
さらりと冷たい風が頬を撫でた。
「 …A。」
『 ッ、シオン…か? 』
「 ふふ、そうよ。驚かせてしまったかしら。」
月から降り注ぐ粒子を集めたかの様に、淡く発光する姿はあの時と変わらず美しい。
数日会っていなかっただけなのだが、懐かしいとさえ感じてしまう。
「 ねぇ、A。貴方…何か悩んでいるのでしょう? 」
『 シオンにはお見通しか。』
「 愚問ね。私に話してご覧なさい? 」
『 …俺がこの世界に存在していても良いのか、わかんなくなった。』
「 …そう。」
励ましの言葉をかける訳でもなく静かに頷いたシオン。
何故かそれが妙に心地好くて、口が勝手に動き出す。
『 ここに来て出会ったヤツらは皆…良いヤツでさ。だからなのか、自分だけがアイツらと違う。そう考えたらさ、 』
「 不安だったのね。誰にも言えない秘密を抱えているから尚更…。」
『 不安、か。確かにそうなのかもなぁ…。』
不意にシオンがAの前まで移動してくる。
不思議に思い、彼女の蜂蜜色の瞳を見詰めれば、柔らかく微笑みを返される。
「 胸を、貸しましょうか?」
『 ははっ…泣いてねぇよ? 』
「 そうね。でも…甘えても、良いのよ? 」
シオンの白く
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花冠(プロフ) - 2017年…四年前の作品で良い物を見つけてしまった…!もっと先に見つけれたら更新されて行く楽しみが味わえたかも…。すごい読みやすいですし、設定が神です!チビちゃんかわいい… (2021年3月18日 13時) (レス) id: 9f55fa5e42 (このIDを非表示/違反報告)
にじ(プロフ) - 雛菊さん» 有難うございます、とても嬉しいです…!これかも期待に応えられるように精進させて頂きますね!これからもご愛読、よろしくお願い致します! (2017年12月1日 18時) (レス) id: 14a110e835 (このIDを非表示/違反報告)
雛菊(プロフ) - 通知リストにあるかな〜と探すぐらい好きな小説です!とても読みやすくて大好きです!! (2017年11月30日 18時) (レス) id: b475004931 (このIDを非表示/違反報告)
にじ(プロフ) - 風音迷夜さん» 沢山のお褒めの言葉…ありがとうございます!好きになって頂けてとても嬉しいです…チビは本当に人気がありますねw (2017年11月25日 16時) (レス) id: 14a110e835 (このIDを非表示/違反報告)
風音迷夜 - ありきたりじゃない世界観に分かりやすい説明、この作品好きになりました!チビちゃんかわいいなもう!僕惚れちゃった←チビドラゴンにww (2017年11月22日 21時) (レス) id: b791237619 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にじ | 作成日時:2017年9月26日 0時