その笑顔……?6 ‹ 鶴蝶 › ページ6
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望月に誘われてついて行けば、アジトに併設された食堂に辿り着く。外回りが多い俺は外食が当たり前になっていて、ここがあった事すら忘れていた。
職業柄というか、独り身が多く手作りの料理が食べたいという意見が多発したため設置されることになったはず。何分、数年も前の話だ、詳しくは覚えていない。
「望月はいつもここで?」
「あぁ、美味いからな」
多くの人で溢れ返った食堂内は、空いている席を直ぐには見付けられない程に混み合っていて。
ふわりと流れてくる香りに、食欲が刺激された。
全員がしっかりと並んでいるため、望月と二人で最後尾を探す。パッと見ては探せない程の長蛇の列に、こんなにも人気なのかと感心する。
メシは美味いに越したことはない、と。
料理人の手際が良いのか列はすいすいと進み、カウンターが見える位置まで移動する。
「……?望月、アレは?」
「Aへの募金箱だな」
「募金、箱?」
カウンターの隅に設置された異様な存在感を放つソレ。近付いてみれば中身は全て100円。そしてその隣にルールが書かれた紙が一枚。
なるほど、さっき望月が100円があるかを確認してきた謎は解けたな、と頷く。
『望月さん、お疲れ様です!』
そうこうしている間に、俺達の順が回ってきたらしい。
望月に話し掛ける彼女が、Aと言われた女性だろうか。柔らかな笑顔と明るい声音。人柄がそのまま反映されたかのような女性だと思った。
話が終わったのか、彼女の視線が俺の方へと移る。
きょとん、と見つめられて一瞬の沈黙。
「……A、こっちは同僚の鶴蝶だ」
「鶴蝶だ、よろしく頼む」
『初めまして、露木Aです!』
望月、今俺が一緒に来てたこと忘れてたよな?
思わずジトッとした目で見れば、フイ、と逸らされた目。本当に忘れてたのか。
望月さんと同じメニューでいいですか?と聞かれ、今日はそれでいいかと頷く。ほかほかと湯気をくゆらせた料理に自然と頬が緩む。
「美味いだろ?」
「あぁ、美味いな」
ここが人気なのも納得だとしみじみ感じていれば、とある会話を耳が拾った。
「露木ちゃーん、今日も美味かった!これ、100円ね!」
『ありがとうございます、お仕事頑張ってください!』
「露木ちゃん、ごちそうさま!100円な!」
『お粗末さまです、またお待ちしてますね!』
……アレが100円が必要な理由か。
俺は、無意識に自分の財布の中身を思い浮かべるのだった。
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瑠璃(プロフ) - 初めまして。とても楽しく読ませていただきました。できれば続編希望します。 (5月18日 22時) (レス) id: f3335c8e16 (このIDを非表示/違反報告)
アカネ(プロフ) - 終わったんか🥺 (2023年3月20日 22時) (レス) @page42 id: eb117a410a (このIDを非表示/違反報告)
さくにょ(プロフ) - にじさーん!!オプチャのサツキです。大分前にコメしたことがあるんですが・・ホントに更新楽しみにしてます!お時間ある時でいいのでいつまでも待ってます! (2023年2月18日 22時) (レス) @page42 id: 075aa05b66 (このIDを非表示/違反報告)
ノア - ほんっとに面白くて最高の作品に出会いました!!続き楽しみです!! (2023年2月16日 23時) (レス) @page42 id: a500e3a75b (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 最高です大好きです文才が天才すぎます、、良ければお時間ある時に更新お願いします、、完結までついていかせてください、、 (2023年2月11日 17時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にじ | 作成日時:2022年7月28日 0時