その笑顔……?24 ‹ 九井一 › ページ25
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パタパタと動き回る軽い足音。
ふわりと鼻腔を擽る食欲を刺激する香り。
じゅわじゅわ、パチパチ、トントンと軽快なリズムを刻む生活音。
四徹明けで、睡眠欲と食欲が限界を訴えていたのは覚えている。
一段落ついた仕事を切り上げて自室に向かう途中、美味そうな匂いを捉えて引き寄せられるように香りの出処を探した。
『……ぃ、……きて、起きてください』
「……?」
『せっかく眠っていたのにすみません……ご飯の準備、出来ましたよ?食べられますか?』
「……いい匂い、」
『ふふ、大丈夫そうですね』
心地好い微睡みからゆっくりと意識が浮上する。
控え目に体を揺する手。優しく鼓膜を揺らす声。まだ上手く働かない頭で、目の前にいるオンナを観察する。
綺麗な顔立ちに背中の中ほどまで伸ばした髪。美人と呼ばれるのだろうが笑うと可愛らしさもある。
じっと観察している間にも目の前のテーブルに並べられていく料理の数々。
知らず、ゴクリと喉が鳴った。
『……あの、何も食べていなかったんですよね?』
「まぁ、な」
『こんなに急に食べられます……?』
「余裕」
むしろこんな美味そうなモンを目の前に出されてんのに食えねえ方がキツい。それこそ鬼畜の所業。
早く食べたいと食前の挨拶もそこそこに、箸を手に取りしょうが焼きへと伸ばす。手料理を食うなんて何時ぶりだろうか。
朧気な記憶の中で、温めなおすと言っていた気がするもののそれでも十分に美味い。コレ、ご飯は炊きたてか?態々炊きなおしたのなら、手間を掛けたななどと頭の中では考えているものの箸が止まらない。
「良ければ」と差し出されたのは味噌汁の入ったお椀。具材はオーソドックスに豆腐とわかめ。差し出されるがままに受け取れば、オンナは空いた食器の片付けを始める。
「……美味かった」
『あはは、だいぶお腹空いてたんですね。たくさん食べてもらえてよかったです』
「なぁ、まだ食べ足りねぇんだけど」
『えっ……逆にまだ食べられるんですか?』
そう言ってオンナは、俺の前に並ぶ空になった皿を見詰める。正直、思ってた以上に皿が並んでいて俺も驚いた。
それでもまだ食べられそうなのは事実なワケで。
少しの沈黙の後、
満足そうな頷き一つと、笑顔。
『
「ん、十分」
……コレが胃袋を掴まれる感覚ってヤツ?
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瑠璃(プロフ) - 初めまして。とても楽しく読ませていただきました。できれば続編希望します。 (5月18日 22時) (レス) id: f3335c8e16 (このIDを非表示/違反報告)
アカネ(プロフ) - 終わったんか🥺 (2023年3月20日 22時) (レス) @page42 id: eb117a410a (このIDを非表示/違反報告)
さくにょ(プロフ) - にじさーん!!オプチャのサツキです。大分前にコメしたことがあるんですが・・ホントに更新楽しみにしてます!お時間ある時でいいのでいつまでも待ってます! (2023年2月18日 22時) (レス) @page42 id: 075aa05b66 (このIDを非表示/違反報告)
ノア - ほんっとに面白くて最高の作品に出会いました!!続き楽しみです!! (2023年2月16日 23時) (レス) @page42 id: a500e3a75b (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 最高です大好きです文才が天才すぎます、、良ければお時間ある時に更新お願いします、、完結までついていかせてください、、 (2023年2月11日 17時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にじ | 作成日時:2022年7月28日 0時