その笑顔、100円【梵天】

その笑顔……？１６ ‹ 灰谷竜胆 › ページ16

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最近、鶴蝶と兄ちゃんがよく弁当の取り合いをしている。
なんでも、鶴蝶が作ってるヤツを教えてくれないから奪ってる、らしい。

兄ちゃんが褒めるなんて珍しいな、とその様子を見守ることも増えて。ソレに気付いた兄ちゃんに無理矢理おかずを口に押し込まれたのは記憶に新しい。

そして、今では。



「鶴蝶、今日のおかず何？」

「なんで当たり前みてぇに両隣に座るんだ……」

「俺達もその弁当食いてーもん♡」



前は一人分くらいだった弁当箱は、今ではサイズアップして三人分くらいはありそうな物に変わっている。
既に俺達に食われることを想定してるのが面白い。

鶴蝶も諦めが入っているのか、溜め息を一つ零してから弁当のフタを開ける。

ほうれん草とベーコンのバター炒め、唐揚げ、かぼちゃの煮物、マカロニサラダに玉子焼き。玉子焼きに至っては、兄ちゃんの要望も通ってだし巻きと甘めの二種類。
白米は、一つの容器だと取り合いになると予想されたのか、気が付けば一人二個ずつの計六個でおにぎりが用意されるようになった。



「もうさ〜？諦めて一人ずつ弁当作ってもらった方がよくね〜？なぁ、鶴蝶♡」

「断る」

「唐揚げって兄貴が食いたいってリクエストしたヤツ？」

「やっぱ肉食いてぇじゃん」



三個に増えたプチトマトの一つを食いながら、かぼちゃの煮物へ箸を伸ばす。



「……うまっ」



皮までしっかり煮込まれたかぼちゃは、程よく甘くて食べやすい。軽く噛んだだけでほろほろと崩れるような食感にもう一つと箸が伸びた。



「竜胆、かぼちゃは一人一つだ」

「……やだ」

「竜胆の反応的にアタリじゃん、俺も一個もーらい♡」



結局、最後の一個は鶴蝶に食われ、仕方なく他のおかずに箸を伸ばす。どれを食べてもハズレはないし、弁当の中はいつも通り空っぽになる。

今日はデザートにカットフルーツも入っていて、いい大人３人がフルーツの取り合いを繰り広げたのは言うまでもないだろう。



「……鶴蝶、そろそろコレ作ってんの誰なのか教えてくれてもよくね〜？」

「よくない」

「俺達も直接会って、礼とか言いたいんだけど」

「メモで十分だろ」



弁当箱を元のバッグに戻しつつ話をしていれば、中でカサリとビニールのような音がした。取り出してみれば可愛らしいメモ紙が一枚とマドレーヌが五個。



「……お仕事お疲れ様です。また作り過ぎてしまったので、休憩の時にでも食べて下さい？」

「……オイ、それは俺のだからな？」



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