その笑顔、100円【梵天】

その笑顔……？３４ ‹ 三途春千夜 › ページ35

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「コーコちゃん♡」

「あ？」

「キモッ」



長期間に渡るデカい取り引きの報告書の最終チェックを九井としていれば、ニヤニヤという表現が似合う気色の悪い笑みを浮かべた灰谷蘭が立っていた。

当然、兄がいれば弟もいるワケで。
蘭の後ろからふらりと現れた竜胆と目が合う。

そしてお決まりの嫌そうな顔。
は？？オマエは何でいつも俺にだけ当たりが強いの？？



「ココちゃん、昨日って誰とドコ行ってたのかなぁ？蘭ちゃん、すっごく気になるんだけど♡」

「何の話だ？」

「俺達に仕事を押し付けておいて自分はオンナとデートとか……竜ちゃんも傷付いちゃったなあ？」

「蘭だけじゃなく竜胆もそんな感じなのは正直キツい」



心底面倒そうに言葉を返す九井には申し訳ないが、話の内容はちょっと気になるので見守ることにする。

いや、これまでずっとイヌピーイヌピー言ってた九井にオンナの影とか気にならねぇヤツいねぇだろ。
梵天の金を管理する九井に直接仕事が行くワケもねぇし、仕事でのハニトラの可能性は低い。



「言い逃れできるよ思うなよ〜？コレ、なーんだ♡」

「うわ」

「証拠写真もバッチリだから……な？」



蘭が見せ付けているスマホの画面を覗いてみれば、可愛らしい外装の店の中で九井がケーキを頬張っている姿がバッチリと映っていて。
テーブルの向かい側にはオンナが座っているものの、後ろ姿しか撮られておらず顔はわからない。

ツイツイとスライドされていく写真には楽しそうに笑う九井がズラリ。
……いや、こんだけ撮るとかイカレてんな？？



「撮りすぎじゃね？」

「蘭のスマホに俺の写真がそれだけあるって事実だけで鳥肌が立った」

「は？蘭ちゃんにいっぱい撮ってもらえて嬉しい♡って喜ぶところだろ、そこは」



コイツら兄弟の自己肯定感の高さナニ？？
自意識過剰とかナルシストの域を余裕で超えてんだよ。どうやったらそこらのオンナよりも面倒な性格の三十路野郎に育つ？？

だがしかし。
証拠写真まで出された以上、九井が気に掛けているっぽいこのオンナは気になる。正直、めちゃくちゃに気になって仕方がねぇ。

報告書の確認作業の途中で乱入されてイラついたが、それもこの際どうでもいい。もしかしたら九井の弱味になるかもしれねぇしなぁ？



「俺と兄貴に隠し事はなしだろ？」

「そーそー♡俺達の仲じゃん？」

「いつにも増して面倒くさいなこの兄弟！」



ベタベタと引っ付かれている九井にはちょっとだけ同情した。


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