あなたを幸せにする全てになれたらいい ページ33
ゆるり。浅い眠りから覚めるとまだ部屋の中は暗かった。時計を見ればまだ深夜二時。二時間も眠っていなかったらしい。
目の前には起きている時からは想像もつかないほどのあどけない表情で眠っている段野さんの顔がある。
細長い腕は私の体に巻き付いていて距離が近い。まあ、一緒の布団に寝てるから当たり前だけど。
向き合って眠っている状態から起こさないようにくるりと段野さんに背を向ける。段野さんの細くて長い指にそっと触れた。
こんなに綺麗な手をしているのに、この手で広島のトップを掴んできたと思うと何処か不思議な感じがする。
「なんじゃ、手に何かついとるか」
後ろから低い声がする。振り返ろうとした瞬間にそれは遮られて、後ろからそっと抱きしめられた。
「段野、さん?」
「…なんじゃ」
「手が、綺麗です」
力強い手。この手は広島で最強なのに、私に触れるときはとても優しく、温かい。
大好きな、大好きな手。
「…そんなこと言う奴はお前くらいじゃ」
「…そう、ですか?」
「あぁ」
ちょっと、嬉しい。いや、かなり嬉しい。
「もう、寝ろ」
「段野さん、眠いですか?」
「あぁ、眠い」
抱き寄せられて近くなった距離。ゼロになった距離の中で漸く段野さんの顔を見ることができた。
本当だ、眠そう。無防備な彼の顔に思わずクスリと笑った。
「何か、おかしいか?」
とろんとしたまま段野さんが私との会話に付き合ってくれる。何だかそれが嬉しくて、今の私の顔は情けないことになってるんだろう。
「…段野さん、かわいい」
「…お前、それ、よう言えたな」
普段の段野さんが見せることのない姿。私が段野さんの為にしてあげられる唯一のこと。…だと思いたい。
「段野さん」
「あ?」
「好きです」
「…おぅ」
照れたように目をそらす段野さんの胸に抱きつく。
頭をそっと撫でられながら目を閉じればだんだんと襲ってくる眠気。
「…俺も」
額に柔らかい感触と低い声が聞こえた瞬間、意識は深いところへ落ちていった。
.
あなたを幸せにする全てになれたらいい
終わり ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)
←あなたを幸せにする全てになれたらいい
39人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
sakadachi1111(プロフ) - 由貴さん» 長編に引き続きコメントありがとうございます!続編がありそうな短編ばかりで申し訳ないです…!頑張って更新していきたいと思いますので懲りずに見に来てやってくださいね! (2016年2月8日 7時) (レス) id: 781f4e9332 (このIDを非表示/違反報告)
由貴(プロフ) - こんばんは!!面白いです!!続きが気になります!! (2016年2月8日 1時) (レス) id: bf39404b50 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さかだち | 作成日時:2015年6月9日 10時