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結局私は弱虫のまま。高嗣に助けてもらってたあの頃から何も変わってはいなかった。
K大には頑張った甲斐があってなんとか合格した。彩美は泣いて喜んでくれた。高嗣には言えてない。
いや、言ったところで反応が薄いのはわかってるし。私がどの大学行こうが高嗣には関係ないんだから。
「K大遠いけど!遊びに行くから!!」
涙と鼻水でぐじゅぐじゅになった彩美を見てるとこっちまで涙が出そうだった。
勉強しかしなかった高校生活が充実していたのは彩美のお陰と言っても決して大袈裟じゃなくて。
卒業式の日。彩美は私のそばを離れなかった。
「ねぇ、A?」
「何?」
「いいの?ラストチャンスだよ」
今まで話題にしなかっただけで彩美は気づいていて。私がずっと高嗣のことを想っていて、傷ついてきたのを触れずに慰めてくれたことにずっとお礼を言えずにいた。
「いつもありがとう彩美。でも、いいや」
「そっか」
それ以降、彩美は何も言わなかった。
卒業式から一週間。一人暮らしをする家に荷物を運び出す日。
朝から両親はせわしなく動いているのに当の本人の私は荷物が運び出されるのを黙って見ていた。
隣の二階堂家を眺めながら。
「あらAちゃんお引越し今日だったの?」
高嗣のお母さんが玄関から現れるとうちのお母さんのテンションが急上昇。長い世間話が始まる。
その後ろからひょっこりと高嗣が現れてちょっと息が止まった。
高嗣はぶすくれたような顔をしていて私と視線を合わせない。まあ、よく最近見る顔だから大して驚きもしない。
傷ついてないわけではないけど。
「お前、K大行くんだってな」
この頃まともな会話をしてなかったから高嗣のこの言葉にびっくりした。
「うん、そうだよ」
あ、声が少し裏返った。
自分から聞いてきたくせにそれ以上話すことはないのか、ふーんと相槌をうつ。
背、伸びたなぁ。髪もおしゃれに伸ばしてて、日に日にかっこよくなっていく高嗣をずっと見てた。
これから見ることはないんだろうけれど。
「元気、でね。…二階堂くん」
ああ、最後かもしれないのに。やっぱり名前で呼べない。
そしてちょっと傷ついたような顔をする高嗣はズルくて、ひどい。
また忘れられなくなる。
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sakadachi1111(プロフ) - 由貴さん» 長編に引き続きコメントありがとうございます!続編がありそうな短編ばかりで申し訳ないです…!頑張って更新していきたいと思いますので懲りずに見に来てやってくださいね! (2016年2月8日 7時) (レス) id: 781f4e9332 (このIDを非表示/違反報告)
由貴(プロフ) - こんばんは!!面白いです!!続きが気になります!! (2016年2月8日 1時) (レス) id: bf39404b50 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さかだち | 作成日時:2015年6月9日 10時