俺がやった悪い事は、もうどうでもいいけどさ。最近、時間が過ぎていくと共に＿＿自分の命が削られていく気がするんだ【薫成り代わり三章】 (ページ8)

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番外編・刀剣ーー和泉守兼定の尾行録ページ8

尾行。それは、普通はこそこそと敵に気取られぬように後をつけるものだが。俺、和泉守兼定は違う

なぜなら、俺の姿は周りの者には見えないからだ。理由は、俺が付喪神と呼ばれる神だからである。その為、俺の姿が見える人間はほとんどいない

いつもは同じ付喪神である加州清光や大和守安定、堀川国広、長曾根虎徹らと一緒にいる。今日も彼等四人と雑談をしていたのだが

隣にいる国広が兼さん兼さんカッコイイカッコイイ兼さん・・・・・、これが延々と横で言われ続けられ俺の精神は浸食されていく

三人はといえば、苦笑いをするだけで助けてはくれない。目を合わそうとすれば、逸らされる

もう、なんでもいい。この状況から逃げれるのであれば。そう思って、視線を明後日の方向に向けたとき出かける先々が目に入った

和泉守「先々のヤツ、どこいくんだろうな」

先々左京はときどき、ふらりとどこかへ出かける。疑問に思い、誰に言うわけでもなく呟いた言葉を、国広は目ざとく拾う

国広「きっと、お兄さんのところに行ってるんじゃないかな」

洋和堂の手伝いとかじゃない？。そう続ける国広を尻目に、俺は先々の背中を見ながら目を細めた。どうも胡散臭いのだ、先々左京とゆう男は

こう思った時には既に、俺は立ち上がり先々の後を追っていた。背後で俺を呼び止める国広の声を無視して

そんなこんなで、俺は先々を尾行している

だが、先々を追っているうちにたどり着いたのは、洋和堂だった。疑いと期待が半々だった俺は帰ろうとも思ったが、どうせなら先々の仕事ぶりでも見て帰ろう

俺は店の中へと入って行く先々を追って、店へと入る。店の中は大勢の客で埋め尽くされており、右京が手にだけでななく頭にまで盆を乗せて

あちらこちらへ客に茶や菓子を渡している。だがそんな忙しそうにしている右京には目もくれず、奥にある階段へと向かって行った

手伝うのではないのか！？階段を上がってゆく先々を咎めもせず、右京はせっせと働く。その事に困惑しながらも、先々の後を追って階段をあがる

先々は階段を上がってすぐ横にある部屋へと入っていった。慌てて俺も入るが、そこには驚きの人物がいた

その人物は長い髪を無造作に束ね、浴衣をはだけさせ壁に寄りかかりゆったりとした体制で書物を呼んでいた