俺がやった悪い事は、もうどうでもいいけどさ。最近、時間が過ぎていくと共に＿＿自分の命が削られていく気がするんだ【薫成り代わり三章】 (ページ7)

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六十二刻ページ7

皆誰しも得意不得意がある。時に不得意は、自分自身に危機をもたらす。まさにその危機が俺に降りかかっていた

時は慶応二年の神無月。場所は島原、武器は紙と筆、敵は芸子の恰好をした千鶴様

はてさて、何故こうなったかとゆうと。それは原田さんが先月の制札警護のお金が渡され、うぉぉぉぉッと気分が高揚した三馬鹿のうち二人

言わずもがな永倉さんと藤堂さんのことである。沖田さんと藤堂さんの話で、A様の事が出てきたときはどきりとしたが

皆一様に千鶴様の芸子姿で一時的に忘れてくれたので助かった

実は俺には、A様から密命をおびていた。その密命とは―――゛千鶴様の芸子姿を絵におさめる゛ことである

二日ほど前、定期的な報告の為に洋和堂に行くと、開口一番

A『こんど千鶴が芸子姿になるだろうから、それを絵におさめてこい。拒否はなしな。じゃ、用はもうないし、帰れ』

いやアンタはなくとも俺には報告という義務があんだよ。アンタが、俺がまだ新選組になる前の浪士組に入るときに

「逐一報告よろしくね」、って言ったんだろうが。ふざけんじゃねぇぞ、ゴラ

A様の顎でも殴って気絶させて、記憶を消し飛ばそうかと思ったが、寸前の所で思いとどまる。第一に、A様に勝てるわけがない

返りうちにあって、顔が腫れあがるだろう。思いとどまった俺、偉いぞ

こうなったら一か八か。俺は筆を紙の上を走らせた

数日後、ほくほくと嬉しそうな顔をしたA様が朧と右京、佐吉の三人に目撃された