花言葉『奇跡的な再会』 ページ48
「……あ?」
寒さで目が覚めた。
重い瞼を開ければ、雪で白みがかった空が視界いっぱいに見えた。
暫く状況に理解が出来ず、舞い降りる雪を仰ぎ見ていた。
上半身を起こすと身体に積もっていた雪が落ちる。
「なんでこんなとこで寝てんだ……?」
見回すと自分は庭園のような所に寝ていたようだ。人の気配はしないが、誰かの家の敷地内なのは間違いない。
不法侵入だ。と通報されても面倒だから、出口を探した。案外すぐに見つかった。
門戸は少し開いていて、閉じ込められているわけでもない。
「本当にこんなとこで何して…っ!?」
ふと屋敷を振り返った途端、頭に激痛が走る。
フラッシュバックするように映像が流れてくる。
同じ風景で、でもそこには誰かが立っていた。
『___うん。また明日』
夕日に照らされた少女の顔。
彼女の表情は微かに寂しそうだった。
年下のくせに生意気で、可愛げがなくて。
気に入らないことがあるとムッとした表情で俺を殴る。
でも、時折見せる。歳相応に微笑む彼女は幾分か可愛らしかった。
そして誰よりも負けず嫌いの努力家。
彼女の名前はA。
篠崎A。
「……忘れてんじゃねえよ。」
彼女を見つけて、伝えないと。
行方なんて分かりやしない。
それでも、彼女を見つけるために走り出していた。
◇◇◇
あれから8年くらい。
僕はAを探し続けた。
任務で赴く場所を歩き回っては、きっと同じ空の下にいる彼女の姿を探した。
ある日のこと。
「……あ、いた」
ふらりと立ち寄った商店街に、Aはいた。
エプロンを身につけた彼女は花屋の前に置かれた紫色の花を持って店内へと入っていった。
不思議と走って追いかけたりはしなかった。
ただ普通に、数日会わなかった友人を見かけた時くらい自然な足取りで歩いて店の扉に手をかけた。
いつになく高鳴る心臓。
深呼吸してから扉を開けて店内へと足を運ぶ。
ずっと探していた、何度も再会を夢に見た彼女。
夢なんかよりも、想像していたよりも遥かにAは大人っぽく綺麗になっていた。
本人は手元に集中しているのか僕に気づいていない
だから僕は、たった今見つけたように少しだけ声を上げて言った。
「おっ、いたいた。随分探したよ、A」
〖記憶喪失な君と僕。〗
おしまい。
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怠慢のにぼし(プロフ) - 緑の白猫さん» ご感想ありがとうございます!そう言っていただけて、構成に頭を悩ませた時間も無駄ではなかったのだと嬉しく思います。 (2021年2月23日 22時) (レス) id: 8a1e62ce6d (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - ストーリーの構成も上手いし、時間軸の移動の仕方も上手いしで…。堪らなく大好きな一作です! (2021年2月23日 21時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
怠慢のにぼし(プロフ) - 琥珀さん» こちらこそ初めまして(*´ч ` *)こちらは五条悟オチになります。嬉しいお言葉ありがとうございます!本当に励みになります (2021年1月20日 10時) (レス) id: 8a1e62ce6d (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 怠慢のにぼしさん初めまして、この小説は五条悟オチですか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年1月20日 10時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:怠慢のにぼし | 作成日時:2021年1月19日 20時