35話「皓月に照らされたものは」 ページ37
どうしようもなく我儘なのはわかっている。
だけど、もう温かさを知ってしまったのだ。
……いつかは失うとわかっていても。
今まで避け続けていたものに、
ここに来て、初めて抗おうと思えたのだ
思わず目を伏せてしまう。視線が怖い
「顔を上げてくれ、A。」
私の思いに反してというか寧ろ優しくかけられた言葉に、気が緩みつつも素直に顔を上げると、彼はしゃがんで目線を合わせてくれる。
「俺は君が今までどんな人生を歩んできたか全くわからない。会ったばかりだし、正直君のことは全然知らないんだ」
ただただ目を見つめるだけの私に彼は、「でもね」と続ける。
「君の目に迷いが無いのはわかる。きっと数多くある選択肢の中で"この国を守りたい"って言ってくれたのが俺はとても嬉しいんだ」
「だから俺は君の意見を尊重する。この国を統べる者として君を快く迎え入れるよ」
私の頭を優しく撫でながら言った彼のその言葉を合図に、今まで塞き止めていたものが溢れ出す。
『ありがとうリムル。……必ず、守ると誓うから』
視界が歪んでいて彼の表情がよく見えないが、大変嬉しそうに微笑んでいるようにも見えた。
対して私はきっと酷い顔をしているだろう。
◇◇◇
「俺の部下になったからには、名前を付けなくちゃいけないな。」
『名前…』
あぁ、すっかり忘れていた。
…確かにそんな恒例行事もあったな。
途中から何か子供をあやすように、私の頭を撫でている彼の手を丁寧に退けながら考えていた。
「あっ…まあだけど既にAって名前があるし、上書きでもいいか?」
『ん、それがいいかな』
「あぁ、わかった。では君はこれからもAと名乗るがいい!!…っん!?」
そうリムルが叫んだ途端、彼は
彼が再び目を覚ますのは、3日後の朝だった。
こうして彼の休暇は眠ったまま幕を閉じるのである。
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怠慢のにぼし(プロフ) - 100人突破しました!!皆様お気に入り登録ありがとうございます!! (2020年3月13日 12時) (レス) id: 2524957e30 (このIDを非表示/違反報告)
怠慢のにぼし(プロフ) - いえいえ!!!!進行上少しだけになるかもしれませんが気長にお待ちください!!! (2020年1月12日 18時) (レス) id: 2524957e30 (このIDを非表示/違反報告)
黒い翼の堕天使(プロフ) - マジですか!?ありがとうございます!! (2020年1月12日 18時) (レス) id: 87644745f4 (このIDを非表示/違反報告)
怠慢のにぼし(プロフ) - 本当にごめんなさい!!!!!!機会があれば百合をぶち込みます!!!!! (2020年1月12日 18時) (レス) id: 2524957e30 (このIDを非表示/違反報告)
黒い翼の堕天使(プロフ) - 好きです!!! (2020年1月12日 18時) (レス) id: 87644745f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:怠慢のにぼし | 作成日時:2020年1月4日 22時