プロローグ ページ1
雨が、降っていた。
雨粒は天から永遠に降り注ぐかのように強く地面へ身を打ち付けていて、道にできた水溜まりにはたくさんの波紋が広がっていった。
『まあ仕方ない…か』
窓に触れていた手をそっと離してから、椅子に腰掛ける。
目の前には分厚い1冊の本。
夏の気配が仄かに残るこの季節。
木材の香りが漂うこの一室で、私は年季の入った表紙に触れながら。最初の1ページを開いた。
◇◇◇
薄暗い部屋に、無機質なキーボードの音が響く。
『…ん、もう昼か』
起床時にどこかの寝起きの悪い主人公に横から勢いよくスヌーズボタンでも押されたのであろう、定位置から遥か遠くの床に転がる目覚まし時計の針は14:00を指していた。
……喉、乾いたな
年季からか少し甲高い悲鳴を上げる背もたれに寄りかかりつ、少女は天井を眺めた。
昨日用意しといた飲料水は数時間前に空になっていた。
のっそりと立ち上がり冷蔵庫に向う。が、無駄足だったようで生憎冷蔵庫には喉の乾きを潤せるようものはなかった。
「かと言って水道水もなぁ……」
『買いに行くか…』
少女は自分の部屋に財布と上着を取りに行った。
最寄りのコンビニなどせいぜい徒歩2、3分だ。
明らかに不健康そうな引きこもりでも特に支障はない。
家を出ると意を決して巣から出てきた引きこもりを蹴落とすが如く冬の乾燥した、冷たい風が襲った。
『さ、寒い…』
もっと厚着してくれば。と後悔しつつコンビニに向かう。
あまりの寒さに凍えながら足を進めていると、後ろから衝撃を受けた。
『ぎょぇ!?』
普通、女性から出てはいけないような、もはや人かどうか疑うような悲鳴を上げて転びかけた。
驚いて後ろを振り返ると、少し遠くに小学生くらいの少年が青ざめながら立っている。そして私の足元にはボールが転がっている、
あぁ、ボール遊びしてたら通りがかった私にぶつかったのか。と自己解釈をして自然な流れで少年に投げ渡した。
____はずなのだが、運動音痴が投げたボールはあらぬ方向へと飛んで行ったのである。
『……あ!?ごめん!!!』
ボールは道路へと転がっていく。つられて私は脇目も振らずにそのまま飛び出す。
それが、いけなかったのだ。
車のエンジン音に我に返った少女が見たのは、迫り来る乗用車。
そこから先は、覚えていない。
一瞬の出来事で、次に見えたのは血に侵食される道路。そう、私の血で。
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怠慢のにぼし(プロフ) - 100人突破しました!!皆様お気に入り登録ありがとうございます!! (2020年3月13日 12時) (レス) id: 2524957e30 (このIDを非表示/違反報告)
怠慢のにぼし(プロフ) - いえいえ!!!!進行上少しだけになるかもしれませんが気長にお待ちください!!! (2020年1月12日 18時) (レス) id: 2524957e30 (このIDを非表示/違反報告)
黒い翼の堕天使(プロフ) - マジですか!?ありがとうございます!! (2020年1月12日 18時) (レス) id: 87644745f4 (このIDを非表示/違反報告)
怠慢のにぼし(プロフ) - 本当にごめんなさい!!!!!!機会があれば百合をぶち込みます!!!!! (2020年1月12日 18時) (レス) id: 2524957e30 (このIDを非表示/違反報告)
黒い翼の堕天使(プロフ) - 好きです!!! (2020年1月12日 18時) (レス) id: 87644745f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:怠慢のにぼし | 作成日時:2020年1月4日 22時