73.五十七頁 ページ25
･
･
⋯⋯⋯⋯⋯はぁ。
ため息を一つつくと寿命が縮む。幸せが逃げていく。
あの根拠のない言い伝えはどこからやって来たのだろうか。
(また今日もダメだったな)
･
･
三年間使い古してボロボロになってしまった単語帳は、眺めてもなかなか頭に入らない。というかもう全て覚えてしまっているのだが。
五十七ページの上から三つ目の単語は、strive。意味は努力する。
まさに今俺に足りないものだ。
腹立たしいくらいに今日の夕焼け空も綺麗で、ただ今日も本人を前にしては何も言えない俺でさえも、包み込んでくれるような温かい色。
いっその事、カラスがカァカァ俺の事を嘲笑ってくれた方がマシだ。
･
･
変に慰められると、逆に虚しくなることばかりで。
かけたてのパーマ。毛先を少しとって指に巻き付けて、それをピンと弾いた。
特に意味の無い動作。無駄な動き。でも何かしてないと心が落ち着かない。
さっきの見事に男らしくない俺を思い出して一人で赤面して、後悔しての繰り返し。こういう時には何か他のことに集中する以外策がないのだ。
･
･
口を開いた瞬間に通り過ぎた特急電車。隣にはぽかーんと頭にはてなマークを浮かべた彼女。
きっと、今の俺をみたらあいつは｢やばー(笑)｣とか何とか。
俺が最も苦手とする、何に対してもヤバいエモいを繰り返す陽キャ巻き髪女子みたいな反応をするだろう。
･
･
松村北斗、十八歳。
変わりたいと思う。⋯⋯思うのだが。
(⋯、上手くいかないな)
･
すればするほど伸びていく模試の結果、Aに近づいていく志望校判定とは訳が違う。
俺が今探し求めているのは正解のない答えであって。それがいかに難しいか、そんなこと考えなくても分かってしまう。
･
･
北斗｢⋯⋯A、｣
口に出してしまえば、口では表し難い感情がじわじわと出てきて、顔が熱くなった。
(少しずつ、俺のペースで)
とりあえず帰ったら、一番にシャワーだ。
今日の後悔ごと、まとめて洗い流してやろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 247人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あんじゅ(プロフ) - えみりーたさん» 嬉しいコメントありがとうございます♡本当にお待たせしました〜(TT)次回の更新もお楽しみに！！ヽ(*´∀｀)ノ (2022年8月10日 23時) (
レス) id: b8ed25930e (このIDを非表示/違反報告)
えみりーた(プロフ) - はじめまして。ずっと更新待ってました！切ない展開に、胸が締め付けられてます。この後どうなるのか、ますます楽しみになりました。期待してます！ (2022年8月10日 22時) (レス) @page8 id: d4d342cc13 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あんじゅ | 作成日時：2022年8月10日 19時
