Ψ後の晩餐7

第284χ ページ9

｢……斉木くん｣

《トイレだろ？》


さっき見られている時もそうだったが、今Aさんはリングを付けていない為心が読める
リングが大きすぎて付けられないという方が正しいか


｢ごめんね｣


部屋のドアを開けると、Aさんはトイレに向かった


やっと番組が始まる


｢斉木くーん！トイレのドアを開けてくださーい！！｣


あぁ、そうだったな

立ち上がりAさんの元へ向かう
トイレのドアを開けると、便座に乗せてくれというので座らせた


｢ごめんね……あとは座ったままズボン脱いでみるよ！｣


その報告はいらない


トイレから出てドアを閉め、自室へ向かう
番組の冒頭を見逃してしまったな
まぁいい
仕方ない


2階に上がりテレビの前に座ったところで"終わったー！"と声が聞こえた

その報告もいらない
というか"ドア開けて"でいいだろ


やれやれ……

膝に手を付き体を起こす
また下に向かいトイレのドアを開けた


｢ありがとう！ごめんね、お待たせ！｣


いや全然待ってない
寧ろ体が戻るまでそこに居てくれないかな？


さすがに可哀想かと思いながらまた小脇に抱え自室に戻る


｢……なんか申し訳ない……｣

《本当にめんどくさい体になったな》

｢だって毒キノコだったとは……｣


まぁ、そうだろうな


自室に付き、テレビの前であぐらをかく


《…………なんでそこに座る》

｢見やすい！特等席！！｣


僕のあぐらの上に座るAさんの背中は本当に小さい
遊太より小さいな

まぁ当たり前か
遊太は5歳、Aさんは2歳くらいの体だしな


｢斉木くん、今日ずっと見ててくれたんだね、何か起きないように｣

《鳥束は危ないからな。何するかわからん》

｢ふふ、ありがとう……！……リング外しちゃったんだ、今日。なんか凄く寂しくなっちゃったよ｣


それは知っていた
追っていた際に外すところを見た

その後僕の事ばかり考えているのも、知っている

Aさんはその時点で僕が既に近くにいた事を知らない様だ


……君は僕のことを考えすぎだ

感情を表に出される度に、本当にこのままでいいのか迷う


Aさんはこのままで良いと言うが、果たして本当にそうだろうか
1番振り回しているのは僕だ

それに喜んで着いてくる君はまるで今の姿そのままの2歳児だ


そのはずなのに
鳥束の去り際を見るAさんを見て、不安が募った

たったあれだけの事で

僕も重症だな

噴火を止める計画よりも、たった1人の人間の方が大切になっていくのが怖い

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