ベイビー・ラブ (ページ6)

今日:173 hit、昨日:168 hit、合計:566,325 hit

◎ ページ6

.

｢なあ、A。この後が1番重要なんだよ｣

｢え、なんですか｣

｢ちゃんと一言一句覚えとけよ？｣

｢わかりました！｣

最後の最後、わざと重要そうに樹先輩は声を潜めた。樹先輩の彼女になれるならと100点満点のお返事を返したら、そんな私に満足そうな顔をして樹先輩は言葉を続ける。

｢俺の言ったこと守るだろ？｣

｢はい｣

｢そしたら身体にある変化が出てくるんだよ｣

｢変化、ですか？｣

｢そ。身体がだんだんムチムチしてくんの｣

｢む、ムチムチ…？｣

｢そんでな、いつものブラがちょっとキツいなって思ったら、｣

｢………はい？｣

｢そしたらお前は俺の彼女だよ｣

言い切った樹先輩の声は震えてた。笑いを堪えているのは一目瞭然。もう何かがおかしいのは分かってた。

だって今樹先輩が話してたのは胸の発育を促進させる方法についてだった。高校生の時あんまりにも貧相な自分のそれが嫌で調べたことあるから知ってる。

｢…………樹先輩のばか！｣

揶揄われたことに気づいて怒った私に、白い歯を覗かせてとうとう樹先輩は笑いだした。

真剣だったのにって思ったらなんか涙まで出てきて最悪。こんなの樹先輩に見せたくないのに、すぐ傍にいる樹先輩は泣くなよ～なんて言って私の頭を抱きかかえるからずるい。

樹先輩の香水とアルコールの匂いに頭がクラクラした。好きな人に触れられるとこんなにもドキドキするもんなの？

怒ってたはずなのに、もう何も考えられなくなる。

｢あーもう、お前まじで可愛いな｣

｢樹先輩の言葉はもう信じない…｣

｢なんだよ？可愛いから樹様の101番目の女にしてやろうと思ったのに｣

｢1番じゃないと意味無いです…｣

ここぞとばかりに樹先輩の胸に身体を預けたら、欲張りだなって言う樹先輩の声がすぐそこで聞こえた。

そりゃそうですよ、先輩。恋する女の子は欲張りなんです。だから1番にしてくれないと駄目なんです。

｢樹先輩すき……｣

｢しつけえな｣

｢うん。でも、すきなんです…｣

だってそんな優しい声で執拗いって言われたって、樹先輩のこと好きでいるのをやめれるわけがない。

意地悪ばっかだしたまにスケベだけど、結局樹先輩は私に甘いのを知ってる。だから、どうしても嫌いになれない。

｢こんな無防備だったら喰われちゃうっつーの｣

呆れたような呟きに、じゃあ食べてって手を伸ばしたら、ばかって笑った樹先輩が私のおでこをコツンと小突いた。