ベイビー・ラブ (ページ3)

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一目惚れなんてものは、この世に存在しないと思ってた。でも私はこの目の前の人に恋に落ちた。

世にいうイケメンなんだと思う。でも私は、カッコイイって思うより前に好きって思った。だからこれは、れっきとした一目惚れだ。

｢あの、先輩？は、学部どこなんですか？｣

｢ジュリでいーよ｣

｢ジュリ先輩…？｣

｢お、いいねえ｣

俺先輩って呼ばれんの初めてだわとか言って、ジュリ先輩が私の頭をいい子いい子するから顔が熱くなる。

田中樹先輩。学年は1個上で、学部はなんと私と同じ文学部。ジュリって名前が珍しくて漢字も聞いてみたら、ご丁寧に苗字まで教えてくれた。ついでにホクト先輩は、松村北斗っていうらしい。あと学部も一緒。

｢樹先輩てあんまサークル来てませんよね？｣

｢今月、金なくてバイトしてたんだわ｣

｢じゃあ来月は来ます？｣

｢んー、ベイビーちゃんは来て欲しい？｣

｢え、めっちゃ来て欲しいです｣

ベイビーちゃん呼びも、樹先輩に呼ばれるなら許せた。なんならむしろもっと呼んでくれていい。

前のめりで答えたら北斗先輩に頭をコンコンされる。なんか俺が話しかけた時と態度違くねって。

いや、だって仕方ないじゃないですか。樹先輩に恋しちゃったんですもん。それに北斗先輩てなんか怖いし。

｢樹先輩とのお話中なんで邪魔しないでください｣

｢は、お前と俺今日初めて話したよな？！｣

｢だって、今逃したら樹先輩会えなくなりそうだもん…｣

｢え、何、俺モテてる？｣

問い詰める北斗先輩とにやにやする樹先輩。とりあえず北斗先輩は無視をして、樹先輩にモテてます私にって言えばまた頭をいい子いい子された。

もしかして、樹先輩私のこと子供扱いしてないか。

そう思うけど、今日ばかりはそれも良しとしよう。高校時代から妙に染み付いてしまった後輩キャラに親指を立てる。

｢やべえ、この子可愛いわ｣

｢手え出すなよ｣

｢北斗狙ってんの？｣

｢んなわけねえだろ｣

やいやい言い合う先輩たち。大学生ってこんなにあっさりと可愛いなんて言えちゃうのか。手を出すとか出さないとかどういうこと？樹先輩に手出されちゃうのは本望なんですが。

｢樹先輩、ぜひ私に手を出してください｣

日本語合ってるかわかんないけど、とりあえず言ってみた。

一目惚れしちゃったんです。先輩の彼女になりたいんです。お願いしますって手を差し出す。

そしたらやっぱりそれは間違った日本語だったみたいで、北斗先輩には心底呆れた顔をされた。

でも私の想い人である樹先輩は、新しいオモチャを見つけたような楽しそうな顔をした。