ベイビー・ラブ (ページ2)

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こっち来れば？って、腕を引かれた先に連れていかれたのは広いお座敷の奥の方だった。

真ん中の方ではコールなんかしてて怖い。てかその中心にマキちゃん居るけど大丈夫かな。まあ私が心配しなくても大丈夫か。

今は自分の状況を理解しようと周りを見渡せば、さっきのワカメの先輩と私に不名誉な名前を付けた先輩と後は見たことないピンク頭の人。

俯いてスマホを見てるから顔は見えないけど、あのピンクの髪は初見のはず。

｢あれ、ベイビーちゃんじゃん｣

烏龍茶を片手に、端っこの席へ腰を下ろした私に最初に反応したのは大我先輩だった。ホクトにって連れてこられたのってニコニコしながら近づいてくる。

ワカメの先輩、ホクト先輩っていうのか。

｢……えと、…はい、ホクト先輩に｣

｢そっか？｣

｢………あの、何か？｣

｢いや？警戒心マックスだと思って｣

目を細めて笑う大我先輩は、女の子みたいに可愛いと思った。透き通る金髪は派手なのになんかお上品だし、肌も羨ましいくらい綺麗。

なんだか浮世離れした人。それが新歓の時、大我先輩に抱いた第一印象だったのは覚えてる。だから、こんな綺麗な人が意味のわかんないあだ名を付けるなんて思ってなかったのだ。

なのに、人って見た目じゃない。それを改めて感じた。

私の大学デビューが失敗したのは８割がたこの先輩のせいと言っても過言ではない。だからついつい視線がきつくなるのは私のせいじゃないのだ。

｢だって、変なあだ名付けるんですもん｣

｢ごめんごめん｣

｢絶対悪いと思ってないです、それ｣

｢ここにいるホクトとジュリも仲間だから許してよ｣

ね？って微笑む大我先輩に、ホクト先輩が深くため息を付いた。ワカメっていうのはどうやら大我先輩が付けたものらしい。

そしてもう1人の方も。ジュリと呼ばれた先輩もスマホの画面から顔をあげる。

京本くんじゃなかったら許してないっすよって、ちょっと掠れた声でその人は言った。気だるそうに、でも口元には微かな笑みを浮かべた顔をして大我先輩に視線を向けてから、今気付いたかのように私の方を見る。

｢あら？新一年生ちゃん？｣

そう、笑いかけられた時、
恋に落ちる音がした。