検索窓
今日:17 hit、昨日:95 hit、合計:268,630 hit

ページ30

.



「A先生、久しぶり〜」

「ご機嫌だね?」

「だって先生に会えたから」



キラキラの笑顔が眩しい。数日ぶりにあった田中くんはちょっと髪が伸びた気がした。


休み明けの今日塾は人がまばら。そんな中でも受験生の田中くんは今日も今日とて授業だ。

だってもうすぐ共通テストだし。
しっかり勉強してもらわなくちゃだし。



「宿題できた?」

「う、…まあ、」

「ほんとは?」

「あと1年分残ってます…」



コラって言ったらごめんねって首を傾げちゃってずるい。私がその顔に弱いの知ってるなこの子。

でもそんなの困る。ちゃんと受かってくれないと、田中くんに私の気持ち伝えられないもん。



「いつやるの」

「…いつか?」

「ふざけないの!」



やたらテンションが高くて言うことを聞かない高校生。

これは駄目だ、ここは厳しく怒らないとって余裕そうなそのおでこにデコピンをかまそうとすれば私と田中くんの間にずいっと黒い影が割ってはいる。



「そんなんじゃ受験落ちるからな」

「げ、松村先生」

「げ、じゃねえだろ」



パチンとかまされたデコピンは田中くんのおでこにクリーンヒット。

何が起きたのかわからなくて目をぱちくりすれば、なんだか吹っ切れたような顔をした北斗が笑った。それは私の好きな北斗の笑顔。



「俺、やっぱり諦めないことにした」

「え?」

「こんなガキに譲るのはなんかムカつく」



だから手加減しねえからなって言うのは、誰より近くで私を見つめていた後輩。もう引かない、そう顔に書いてある。



「せいぜい頑張りな、コウコウセイ?」

「大人げないっすよ」

「大人には負ける?」

「…負けねえよ」



バチッと散ったのは見えない火花。窓から吹き込んだ風に、柔らかい茶髪と整った黒髪がふわりと揺れた。

今まで通りなんてない。けど、新しい風は吹く。

ep.11 抱きしめてあげるから。→←◎



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (366 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
854人がお気に入り
設定タグ:SixTONES , 田中樹 , 松村北斗   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

sail(プロフ) - ゆーみんさん» コメントありがとうございます!キュンキュンがお届けできて嬉しいです! (2020年11月29日 16時) (レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーみん - めっちゃキュンキュンしました! (2020年11月29日 15時) (レス) id: 505bb2abee (このIDを非表示/違反報告)
sail(プロフ) - 早瀬さん» タイトルの意味にまで気付いていただけてとても嬉しいです。これからもよろしくお願いいたします! (2020年11月13日 13時) (レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
早瀬(プロフ) - 完結おめでとうございます!最初は間違いなく樹の目線だったタイトルが、最後の最後で長谷川先生のタイトルになったこと、お洒落すぎました。素敵なお話をありがとうございました。次回作も楽しみにしています! (2020年11月13日 10時) (レス) id: d923da9d53 (このIDを非表示/違反報告)
sail(プロフ) - 早瀬さん» コメントありがとうございます。想いあってたのにすれ違った2人を書いていて、私も切なくなりました、、、これからも更新頑張ります!ありがとうございます! (2020年11月5日 19時) (レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:sail | 作者ホームページ:http://ma-no homepage  
作成日時:2020年10月23日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。