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｢…なんで北斗が怒るの｣
北斗のせいで私だって傷ついたのに。
｢怒ってないけど、…ああもう、まじでなんで聞いてたんだよ｣
なんでって聞こえちゃったんだもん、仕方ないじゃん。私だって聞きたくなかったよ。
今日は言い合いなんてしたくなかったのにな、上手くいかない。
｢とにかく聞いちゃったのはごめんだけと、もう大丈夫だから｣
｢なにが｣
｢もう北斗のことただの後輩って思えるようになったから｣
もう避けないし今まで通りだよって、伝えた。でもこれ以上近い距離は困るの。私、新しい恋を始めるから。
ごめんねって言ったら、眉を寄せた北斗が呟いた。独り言のような小さい声で。
｢じゃあもう遅いのかよ｣
｢遅いって？｣
何が遅いのって言えば、切なそうな顔で北斗がふっと笑った。まじかーってしゃがみ込んだ北斗が小さな声で言う。
｢あれさ、嘘って言ったらどうする？｣
｢え…｣
｢俺が本当はAのこと好きだって言ったら、俺のことまた好きになってくれる？｣
上目遣いがなんだか子犬みたいだった。それがちょっと可愛くて、切なくて、涙が出そうだった。
｢長谷川先生とは付き合えないって言ったじゃん｣
｢照れ隠しに決まってんだろ｣
｢だってすごい声も冷たかった｣
｢俺あいつ、好きじゃねえし｣
ほんとまじでなんで聞いてたんだよって言う北斗に、とうとう堪えきれなかった涙が零れた。
だってなんで今言うの、遅いよ。もう遅いんだよ、北斗。
私、北斗のこと好きだった。
傍にいて、誰よりも心地いい存在だった。
でも今私が会いたいと思うのは、その手を握るために走りたいと思うのは、北斗じゃない。
生徒のくせに、生意気ででもすごく魅力的なあの子なの。
｢泣くなよ｣
立ち上がった北斗が私の頬に手を伸ばしかけて止めた。ぎゅっと握られた拳が、私達の距離を教える。
｢帰ろうか、…長谷川先生｣
久しぶりに呼ばれた呼称に痛いくらいわかった。
今まで通りなんてないって。
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sail(プロフ) - ゆーみんさん» コメントありがとうございます！キュンキュンがお届けできて嬉しいです！ (2020年11月29日 16時) (
レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーみん - めっちゃキュンキュンしました！ (2020年11月29日 15時) (レス) id: 505bb2abee (このIDを非表示/違反報告)
sail(プロフ) - 早瀬さん» タイトルの意味にまで気付いていただけてとても嬉しいです。これからもよろしくお願いいたします！ (2020年11月13日 13時) (レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
早瀬(プロフ) - 完結おめでとうございます！最初は間違いなく樹の目線だったタイトルが、最後の最後で長谷川先生のタイトルになったこと、お洒落すぎました。素敵なお話をありがとうございました。次回作も楽しみにしています！ (2020年11月13日 10時) (レス) id: d923da9d53 (このIDを非表示/違反報告)
sail(プロフ) - 早瀬さん» コメントありがとうございます。想いあってたのにすれ違った2人を書いていて、私も切なくなりました、、、これからも更新頑張ります！ありがとうございます！ (2020年11月5日 19時) (レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sail
| 作者ホームページ：http://ma-no homepage
作成日時：2020年10月23日 11時
