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｢まあでも、正直なとこ長谷川は松村と付き合うと思ってた｣
今しがた考えていた後輩の名前に胸がドキリとした。でももうそれは、田中くんに感じるような甘酸っぱいものじゃなかった。
｢ちょい前までさ、あんたと松村いい感じだったしそのままいくかなって思ってた｣
そう、いい感じだったの。北斗が寝込んだあの日から、私は北斗の特別になれた気がした。
だから好きなのかもって思った。けど、北斗の本音を聞いちゃって叶わないって思った。そして私の心にぽっかり穴が空いた。
でも、その隙に入ってきたのが田中くんだったんだ。もともと特別だと思ってた彼は、しれっと私の中に入ってきた。
きっと、流されてしまったのだ。私より3つも歳下の高校生に。
辛い時に寄り添ってくれた彼の腕の中で泣いた日、私は男の子として彼を見ていた。好きって言われた日だって、もう逃げられないって思った。
｢でも今はさ、田中くんが好きなんでしょ？｣
｢好き、ていうか…｣
｢じゃあさ、今あんたが会いたいって思うのは誰よ｣
目をつむって考えたら、浮かんできたのはあのはにかみ顔。ちょっと褒めただけで嬉しそうに笑う、可愛い男の子。
｢人の心は簡単に変わるのよ｣
だから今の自分の気持ちに自信を持ちなさい、なんて。強く背中を押されたのは12月もあと1日で終わる、そんな日。
｢受験終わるまで待っててくれるかな｣
｢いや、あの子は絶対待つでしょ｣
彼の進路が決まるまで、彼にはこの気持ちを伝えない。送り出した時にきっと伝えるから。
ねえ、待ってて？
｢長谷川、スマホ鳴ってるよ｣
｢ほんとだ｣
小川に言われ、テーブルに投げ出すスマを手に取った。ディスプレイに光るのは『松村北斗』の文字。
｢私、行かなきゃ｣
もう、北斗からも逃げちゃ駄目だって思った。
避けててごめんって、でももう大丈夫って伝えないと。だって、やっぱり北斗は大事な後輩だから。
｢うん、話付けてきな｣
｢何それ極道みたい｣
｢うるさい、早く行きな｣
送り出してくれた小川に背を向けて、年末のせいか賑わう居酒屋を出た。
見上げた空からは、今日も白い結晶降り注いでた。
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sail(プロフ) - ゆーみんさん» コメントありがとうございます！キュンキュンがお届けできて嬉しいです！ (2020年11月29日 16時) (
レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーみん - めっちゃキュンキュンしました！ (2020年11月29日 15時) (レス) id: 505bb2abee (このIDを非表示/違反報告)
sail(プロフ) - 早瀬さん» タイトルの意味にまで気付いていただけてとても嬉しいです。これからもよろしくお願いいたします！ (2020年11月13日 13時) (レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
早瀬(プロフ) - 完結おめでとうございます！最初は間違いなく樹の目線だったタイトルが、最後の最後で長谷川先生のタイトルになったこと、お洒落すぎました。素敵なお話をありがとうございました。次回作も楽しみにしています！ (2020年11月13日 10時) (レス) id: d923da9d53 (このIDを非表示/違反報告)
sail(プロフ) - 早瀬さん» コメントありがとうございます。想いあってたのにすれ違った2人を書いていて、私も切なくなりました、、、これからも更新頑張ります！ありがとうございます！ (2020年11月5日 19時) (レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sail
| 作者ホームページ：http://ma-no homepage
作成日時：2020年10月23日 11時
