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「さ、そろそろ吐いたらどうなの」
「え、と?」
「田中くんとなんかあったでしょ」
ぐいっと乗り出したせいで小川の豊満な胸元が覗く。こんなの男にやったら鼻血だすかも、なんて思っていればパチンとデコピンが一発。
授業納め後の大掃除を終えてそろそろ帰ろうと思った矢先、待ち構えていたかのような小川に捕まった。
引きずられた居酒屋で、とりあえず頼んだレモンサワーの氷がカランと音をたてる。
「で、田中くんとは?」
「……なんか、ありました」
もはや尋問のように迫られれば嘘を付けなくて、首を縦にふった。
だって小川には隠せない。長い付き合いの彼女には頭が上がらないのだ。
「とうとう告白されたか」
「…なんでわかるの?」
「顔見てたら、ね」
「田中くんやっぱり違う?」
「いや、あんたの顔だよ」
嘘、って言ったら、自覚ないのって笑われる。ないないって首を振れば、あんたの方が嘘だよって言われた。
いつも通りにしてたつもりだったのに。
どんなにドキドキしても胸の中にしまってたはずなのに。
私、どんな顔してたのよ。
「長谷川はどう思ってるかわかんないけど、私はありだと思ってるよ」
いつだって、私と田中くんを茶化してた小川がちょっと真面目な顔で言う。そんな親友の声は、酷く胸に響く。
「最近の長谷川、可愛くなった」
「…そんなこと、」
「なくないよ。だって恋する乙女の顔してる」
急にほっぺたが熱くなったのは、お酒を飲んだからじゃない 。彼のことを考えたから。
「私はあんたに幸せになってほしいのよ」
なんて、親友が言うなんてずるい。
「でも、生徒と先生だよ」
それでも言い返してしまうのは、自分の気持ちに自信がないから。
「告白されても、嫌じゃないんでしょ?」
「だって、田中くんがグイグイくるから」
「論外な相手だったらキモイって思うだけじゃない?」
正論すぎる返しに言い訳が見つからなくて困る。だってこんなんじゃ私、本当に田中くんのこと好きみたい。
でも私、好きって気持ちがわからないの。
この前まで北斗のことを好きだって思ってたはずなのに、今は田中くんに心を揺さぶられている。
人の気持ちってこんなにすぐに変わるものなのだろうか。今までろくに恋なんてしてこなかったからわからない。
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sail(プロフ) - ゆーみんさん» コメントありがとうございます!キュンキュンがお届けできて嬉しいです! (2020年11月29日 16時) (レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーみん - めっちゃキュンキュンしました! (2020年11月29日 15時) (レス) id: 505bb2abee (このIDを非表示/違反報告)
sail(プロフ) - 早瀬さん» タイトルの意味にまで気付いていただけてとても嬉しいです。これからもよろしくお願いいたします! (2020年11月13日 13時) (レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
早瀬(プロフ) - 完結おめでとうございます!最初は間違いなく樹の目線だったタイトルが、最後の最後で長谷川先生のタイトルになったこと、お洒落すぎました。素敵なお話をありがとうございました。次回作も楽しみにしています! (2020年11月13日 10時) (レス) id: d923da9d53 (このIDを非表示/違反報告)
sail(プロフ) - 早瀬さん» コメントありがとうございます。想いあってたのにすれ違った2人を書いていて、私も切なくなりました、、、これからも更新頑張ります!ありがとうございます! (2020年11月5日 19時) (レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:sail | 作者ホームページ:http://ma-no homepage
作成日時:2020年10月23日 11時