こっち向いて、ハニー！

◎ ページ23

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文法問題は8割で長文問題は7割。正答率は申し分ない。これなら本番も期待出来るねって、横を向けばキラキラした瞳と目が合った。

まるでご褒美を待つワンちゃんみたい、と思う。



｢プレゼントは？｣

｢用意はしてないから、欲しいもの言って｣



あんま高いものは駄目よって言えば、そんなもんいらねえって。じゃあ何が良いのよって目で促せば、するりと冷たい指が私の指に絡まった。



｢一緒に帰りたい、デス｣



なんて、にっこり微笑まれたら心臓がおかしくなっちゃう。こういうのがずるいのだ。私ばっかりドキドキしてしまう。



｢それでいいの…？｣

｢それがいいの｣



本気の顔をした田中くんは、私のことを惑わせる。ちょっとヤバいかもって思っても引けない。なんかもう、田中くんから目を逸らせない。



｢A先生、顔赤くなってる｣



ふふ、って笑われて、余計顔が熱くなった。こんなのおかしいのに、なんで私こんなに恥ずかしいの。なんでこんなに照れてるの。


高校生のくせに大人を揶揄うなんて酷いよ、田中くん。いつもちょっとチャラくて、でも真摯で、そんなギャップに惑わされる。



でも、このまま流されては駄目。ここで踏み止まりなさいって引き止める冷静な私がいるのだ。


だって、所詮は塾講師と生徒。

田中くんの周りにはピチピチギャルがきっと沢山いて、私だって探そうと思えばきっと歳が近くて気の合う人がいるはずだ。


きっと私、今すごく弱ってる。だからこそ、選択を間違えたら駄目。どんなに甘い視線を送られても、それに流されてはいけない。

彼は受験生で大事な時期だし、私だって北斗のことを完全にふっきれたわけではないから。


あれ以来、なんだか気まずくて私は北斗を避けてしまってて、あんまり話も出来ていない。

北斗もそれに気づいてて、俺なんかした？って送られてきたLINEは未読のまま。



もう、どうしたらいいのかわからない。田中くんのことも、北斗のことも、気持ちの整理が出来ていないのだ。

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