64話 582 ページ35
「凛は、ブフッ、可愛いねえ……」
「絶対殺す」
「顔真っ赤だよ……」
「こっち見んな殺す」
「ボキャ貧……」
「うるせえ殺す」
もはや凛は殺すとしか言わなくなって、まるでBotのようである。
「ホワイトデーどうしよっかなあ〜」
「死ね」
「笑ってごめんね。あのね、俺もらえて嬉しかったからお礼言いたかったの」
「お前もう、ほんと、黙れよ……」
柄にもなく弱々しく言う凛に慰めるかのように肩に手を置くが、それも力なく振り払われる。
髪で隠れた顔から覗く白い肌は赤く染まっていて耳までもが赤くなっていた。
先程までなかった汗がじわりとこめかみから頬を伝うのが見える。
「ねえ、写真撮っていい?」
Aの脳天がかち割れたのは言うまでもない。
_________
頭が痛い。
真冬の日に氷に頭を打ちつけたように痛む。
一番痛みがある箇所を手で撫でて和らげようとするが全く効果なし。
凛は相変わらず不機嫌なままである。
Aはおそるおそる凛に話しかけた。
「りーん?ごめんってば〜。機嫌なおして、ね?」
「……お前」
「はっ、はい!」
いきなり口を開くので驚いて肩が跳ねる。
反射的に頭を手で押さえて頭を守る体勢をとった。
だが、凛の声音に先程までの怒りは見られない。
「どした?……俺、土下座した方がいい?」
「数字の、やつ」
「ああ、ナンバーマッチングね!それがどうかした?」
会話の流れが掴めず少しどぎまぎする。
凛が何か言ったような気がしたが上手く聞き取れず覗き込むような体勢で再び耳を傾けた。
「9番だろ」
「え、うん」
ジャージのポケットからいい加減に折りたたまれた紙を取り出す。
紙には黒ペンで書かれた丁寧な字があった。
そこには582と書かれている。
「えー!?お前だったの!?なんだよ興味ないとか言ってバリあんじゃん!!」
あまりの嬉しさにバシバシと埃が立つほど強く凛の背中を叩いた。
睨んだその視線はいつもの調子を取り戻している。
「三階に今から直行したいところだけど、俺この後から審判とか集計やんなきゃダメなんだよね。今日は無理そうだから明日でもいい?」
「別に好きにすればいいだろ」
Aは顔を明るくし、その場を後にした。
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殺痲(キルマ)(プロフ) - 由良の門をさん» コメントありがとうございます!彼は人の間に入ってもみくちゃにされるのが得意なのでもしかしたら今後サンドバッグとして活躍するかもしれません笑 (6月5日 9時) (レス) id: 57b9dc3a01 (このIDを非表示/違反報告)
由良の門を - モブ男かわいいです笑笑彼の活躍を期待してる自分がいる (6月1日 22時) (レス) @page9 id: 2f071b2218 (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - ねぎさん» コメントありがとうございます!新しい何かがほしいと思い爆誕したのがモブ夫でした…。キルマの作品オリキャラが出しゃばってくることが多いので楽しんで頂けて何よりです!モブ夫の活躍に乞うご期待ですね! (2023年4月9日 12時) (レス) id: 6f6fe81f90 (このIDを非表示/違反報告)
ねぎ(プロフ) - モブ夫を待ってる自分がいる、、笑。あひょ本も最高でした!笑 (2023年4月9日 3時) (レス) @page50 id: 37620205ea (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - 龍さん» コメントありがとうございます!玲王のやつはちょっと心配だったので気に入ってもらえて嬉しいです🥰応援ありがとうございます!! (2023年3月6日 21時) (レス) id: ff5faac6c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:殺痲(キルマ) | 作成日時:2023年2月9日 18時