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ギギギギｨ……と重い音を立てて開いた鉄製の門扉が、この本丸の放置期間を物語っているようだった。
雑草で荒れ果てた土地を踏みしめながら、再度自分の中で確認する。
私はやっと一人前と言われようかという段階、つまりまだ半人前だ。知識も何もかも学んだばかりで応用がきくほどの経験もない。初心者に毛が生えた様なものだ。
門扉の前でもしたが一応、もう1回入口の障子の縁をノックする。
もちろん返事はない。
当然だ、誰もいないと聞かされているのだから。
「……お邪魔します」
一応中に聞こえるくらいの声で挨拶をし、靴を脱いで上がろう……としたがとても素足で歩けるとは思えないくらい汚れや劣化で荒れ果てた廊下。
……念の為と持ってきた靴下が役に立ったなぁ。
廊下を進み、適当に部屋の障子を開ける。
まぁ無論汚いのだが、住めないほどではない。
私も寝泊まりしないといけないし、荷解きもしたい。
部屋の押し入れらしき襖を開けると埃っぽいが汚れはない布団が一式でてきたのでひとまずこの部屋を私の拠点としよう。
準備してきた荷物を下ろし、中から掃除用具諸々……名付けて本丸綺麗セットを取り出す。
今日はこの部屋を綺麗にしよう。
広い部屋だから綺麗にすれば寝起きと身辺だけは快適に過ごせる。
巫女服の袖をたくし上げタスキを回し、箒に雑巾を取り出してバケツを持つ。
よし、水場を探そう。
厨でも井戸でも何でもいい、雑巾を濡らすための水をバケツに溜めたい。
「……あった、井戸」
来た道を戻って玄関から外に出て散策すると、井戸を見つけるのはさほど難しくなかった。荒れ果てた畑や、生きてるのか死んでるのかも分からない厩を横目に進めば大きな井戸が現れた。
にしても汚い。
もう今日は半日もないから掃除は見送るが、ここも早めに綺麗にしないといけない。庭や畑といった外の地物は建物の印象を左右するから。
ぼんやりと明日は外掃除だなぁと思いながら井戸で水を汲む。下に沈んでいて見えなかったが、ずっしりとした重みが縄越しに伝わるので桶は切れ落ちてないようだった。
にしても些か重すぎる気が……大きい桶なんだろうか。最後の方は体重で持ち上げながら上がってきた桶を見ると。
「……これは打刀、かな？」
桶の底に日本刀が突き刺さっていた。
鞘は器用に……と言っていいのか分からないが桶の中に大人しく収まっていた。
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