六 ページ6
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不自然な体の重みに意識が浮上した。
これはもしや金縛りというやつ……？
恐る恐る目を開けると。
「おや、お目覚めかい?ご主人様」
甘い囁き声と、私に馬乗りになって上着をどんどん脱いでいく男の人。
その肌から顕になるのは紅い縄。
「亀甲……貞宗」
「ぼくのことを知ってくれているんだね、嬉しいなあ」
「いや、その……何して」
「ぼくを見つけて手入れしてくれてありがとう。その『お礼』をしに来たよ」
遂には主人にさえ見せられないと言っていたその紅い縄を、上裸となり惜しげもなく晒す。
これから行われるであろうことは嫌でも察し、身体が強ばる。やだ、私まだ好きな人とでもそういうことしたことはないのに、なのに初めてが初対面の刀?無理すぎる、怖い。
身体中がガタガタと震えるのを感じる。
「や……そ、宗三…………ｯ」
「そんな緊張しないで、安心してくれ。ぼくは上手だから。……それとも彼にも見てもらうかい？」
そう言われ、上げかけた悲鳴をすんでのところで飲み込む。でもこのまま黙ってたら確実にやられる。違う意味で。
どうしよう、どうするの？
刀剣男士に襲われた時の対処方法なんて習った？
否、習ってるはずがない。
このままやられる？ 嫌に決まってる。
でも、こんなことは習った。
やらない方がいいとは言われたが。
遂に私の寝巻きの襟に手が掛かった。
もうとやかく言ってる暇はない。
「『亀甲貞宗、離れなさい』」
「ぇ……」
弾かれたように、操られたように彼の体が私から離れる。当然だ。霊力を込めて名前で縛る、所謂『言霊』を使ったんだから。
私たち人間である審神者が、神である彼らを唯一強制的に服従させられる方法。
だからこそ使いたくはなかったが、私の危険だ。許して神様、とどこかの神に懺悔する。
呆気に取られたように私と距離を取り部屋の隅に座り込む亀甲に、私の傍へ脱ぎ捨てられた服を投げ付ける。
ちら、と宗三の方を見ると驚いたようにこちらを見て固まっていた。
まだ身体の震えは収まらないが、ここにいちゃ駄目だ。私が何をしでかすか分からない。
震えを堪えて寝巻きの襟を直し、立ち上がって部屋を走り出た。
まだ構造もマトモに把握してないが宛もなく歩き回る。運がいいことに刀剣は宗三と亀甲しかいない。突然殺されることもないだろう。
そう高を括って縁側をドタドタと歩いていると。
「そんなに急いでどうするつもりだ？」
声が掛かったのは、私が通り過ぎたばかりの廊下だった。
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