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またすれ違ったらどうしよう、なんて曲がり角の度に恐る恐る先を覗き込んだりしながら、どうにかこうにか拠点である綺麗な大きな部屋に戻ってきた。
とりあえずここまで来れば一安心だろう。
襖を開けた。
「……随分と長い湯浴みでしたねぇ」
「ちょっと、考え事をしてて────!?」
何も考えず襖を締めながら返事をしかけて……違う何で声がした!? 思わず振り向く。
すると私の返事も何もかも見透かしたように笑って見せた、先程入浴前にすれ違った綺麗な人。
「それって、僕のことだったりします?」
「……宗三、左文字」
私が名を呼ぶと彼──宗三左文字はその目をすいっと細めた。
「おや、さっきは何も身構えずこんばんは〜なんて過ぎ去るから何も知らない子供かと思いましたが……違うようですね。
貴方はここに派遣された審神者、で間違いないですね。ここの話も聞いてるでしょうに、僕を手入れするなんて……間違いなく馬鹿としか言いようがない。
あの時すれ違いざま貴方を斬ることだってできたんですよ?今だって。
あのまま見なかったことにして井戸に落としておけばよかったものを」
彼はここまで饒舌な刀だとは思っていなかったがケースバイケースというか、時と場合ってやつだろう。
「ここの話は聞いてます。
私はこの本丸の浄化と修復、そして再建を命じられて派遣されました、審神者のAといいます。
えっと……直るか分からなかったので手入れ部屋に預けたら直って……その、よろしくお願いします」
とりあえず彼の真正面に正座して軽く頭を下げてみると、帰ってきたのはダルそうな溜め息。
「貴方……本当にここがどこだか分かってますか？ ブラック本丸の跡地ですよ。
そんな所にいる人間不信の刀剣によろしくお願いします……だなんて、本当に貴方死にたいんですか？」
「心配して下さってるんですか？ 優しいんですね」
「話にならない。貴方、ここが跡地でよかったですね。少なくとも今は僕が殺す気にならない以上は生きていられますが……他が居たら早急に死んでましたよ」
苛立った様な声色で咎められるが今ここには彼しかいない訳だし、彼も血気盛んな方ではないと記憶している。こんな形になるとは思わなかったが作業手が増えたと思えばラッキーだ。
長い掃除と緊張で疲れたのかふぁあ……と欠伸が零れる。
「聞いているんですかあなたは、人が話しているのに欠伸なんてして」
「お腹空いたからご飯食べましょ」
「貴方は……！」
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