87* もしかして避けられてる? ページ39
雀の鳴く音で腫れた目がゆっくり開かれる。
あれだけ暑苦しく毎晩感じていた温もりは今日は無くて、Aは季節は夏の癖にぶるる、と震えた。
「……居ないし」
広すぎる洋室に彼女の声が消える。
味気のないスパゲティを一人で食べて、もうしばしばして痛みすら感じるであろう瞳がまた潤み出した。
「……昨日スパゲティ作るって…約束したじゃん」
いつも快活な彼女がここまで弱っている。
何しろ昨日は一人大きなベッドで泣き寝入りしたのを神様は知っていた。
白いワンピースに袖を通してしばらく考えた結果…。
彼女は総悟が居るであろう屯所を訪ねる事にしたようだ。
「こんなんでめげないし! 何か事情があるんだろうし! 今日も祭一緒に行くって約束したし!」
元JKの根性で腫れに腫れた目を冷水で冷やしてばれないように化粧して気合を入れる。
そして一度大きく深呼吸をして、黄色のパンプスに足を入れた。
*
「……へ? すいません嘘ですよね?」
「い、いやだから! 本当に居ないんだよ!」
屯所の前に常駐していた隊士の言葉に、Aはその幼さの残る顔を感情の無い目と共にその隊士に向けた。
「沖田隊長は今日は朝早くから巡視に行ってくるって言って一人で出て行ったんだって!」
「あの総悟が? まさかぁ。バズーカでも降るんじゃないですか?」
「何だよバズーカ降るって! どんな天気予報だ!」
「いいから総悟を出してください。本当はいるんでしょ?」
「お前はどこの闇取引人だよ! だからいねェって!」
腕組みして仁王立ちするその可愛らしい顔に最初こそは戸惑ったもののその残念すぎる中身に隊士もドン引きで後退りした。
その時、第三者が隊士に助け舟を出す。
「総悟ならいねェぞ、A」
「…! 十四郎さん!」
「副長ォ!」
「何でお前も目輝かせてんだ」
隊士のきらきらした顔に複雑そうに眉を顰める土方。
そんな事はつゆ知らず原因の元は土方の元に駆け寄ってその小さな口を饒舌に動かした。
「十四郎さん! 総悟は!」
「朝から巡視だ。珍しい事もあるもんだが」
「……………本当に居ないんだ」
「いやだから俺言ったよね!?」
後ろで常駐の隊士がぎゃーすかと叫ぶが感傷に浸る彼女は耳すら貸さない。いや聞こえてない。
そんな様子の彼女にふと考えて、土方はその小さな頭にぽん、と手を乗せた。
「………菓子でも食ってくか?」
88* 阿保は言われても気づかない→←86* この手を握れるのは、今は俺だけ
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桃 - うぇ!? なんですかこの作品!…………神じゃないですか!! 作者様神ですか!? この神作品を作ってくださって有難うございます!いつまででも更新待ってます! (2018年10月3日 19時) (レス) id: 6ebd955238 (このIDを非表示/違反報告)
蒼井(プロフ) - 主人公とキャラの駆け引きがとっても自分のタイプです!これからも応援しています! (2018年4月3日 22時) (レス) id: 2e9a8055ee (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - これからも頑張ってください! (2018年2月10日 12時) (レス) id: 5460fa1ff4 (このIDを非表示/違反報告)
さらんりちぇ(プロフ) - 総悟大好きなので、すごく面白いです!これからも更新がんばってください! (2018年1月31日 20時) (レス) id: f4f18cc943 (このIDを非表示/違反報告)
インク(プロフ) - 沖田くんオチですか。…沖田くんオチって意外と人気あるんですよねコレが。こんな駄作者な私でも100hitも行けるくらい。沖田くんはやっぱ最高だった。続き待ってます。と言っても最後のセリフは完全に襲う気マンマンだけど。 (2018年1月8日 6時) (レス) id: 2ca11f0d25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2017年10月29日 20時