96* 落とし前つけやす ページ48
少し落ち着いたAの手を引いて、総悟が立ち上がる。
涙目ながらきょとんとしていると、総悟は相変わらずの涼しげな顔でこちらを見た。
「何してんでィ、旦那ン所行くぞ」
「えっな、何で? ちょ、あの私気まずいんだけど…」
「お前の事情なんざ知らねェや。俺は旦那に依頼の決裂を言いに行くんでィ」
「それって私が居なくても平気じゃ」
「お前と一緒じゃなきゃ意味ねェだろィ」
総悟の言葉に少しときめいたAだったが、ぐいぐいと手を引かれて益々近づいてくる万事屋の看板に彼女の手が汗ばむ。
「旦那、総悟でさァ。入りやすぜ」
「テメェ一体何しにきたアル…って、ん? A?」
「や、やっほーさっきぶり」
「Aは何度来てもいいネ!」
古びた階段を上がって遠慮のえの字も無くそのガタが来ている万事屋の引き戸を勢いよく開ける。
するとやはり出迎えたのは神楽で、両方の顔をみて正反対の顔をした。
「…旦那」
「おー。どったよ。Aちゃんも連れて」
神楽を無視して総悟は彼女の手を引きながら奥へと進む。
居間には先程と変わらない位置に銀時が新聞を読んでいて、新八はお茶の準備をしていた。
「契約破棄でさァ。俺は依頼報酬は払えねェ。
此奴だけは…譲れねェんでィ」
「…っ」
彼女の手を強く握る総悟。
あまりに格好良いその横顔と台詞に彼女は隣で吐血しそうになっていた。
新聞で隠れていた顔があらわれる。何を考えているか分からない死んだ目。
「―…お前何言ってんの? 報酬はもう貰ったけど」
「…は?」
「いやいや覚えてない? 報酬はAちゃん…っつったけどよー。お前がつきっきりで遊びにも誘えねーから、出掛けさせてくれって意味だったんだけどぉ」
「はいィィ!? 銀さんアンタなんてゲスな!!」
「黙ってろメガネ」
「神楽ちゃん酷い!!」
兎にも角にもこの男はあくまでもシラを切るつもりかい、と総悟は舌打ちしながら思っていた。
「そんじゃあ、」総悟が彼女の肩を抱き寄せる。
「報酬も払ったって事で、こいつとはいい友達でいてくだせェ。…隣はいつでも俺ですがねィ」
「総悟かっこいい……げふ」
「黙ってろィ阿保」
遂に耐えきれなくなったAが吐血した。
乱暴に彼女の口元を拭いて今度はまた強引に出口へと向かう総悟。
「Aちゃん。…いつでもおいで」
「……ありがとう銀ちゃん! 気持ちだけ貰っとく!」
「あちゃー」
頭を抱え込む銀時は、何処か清々しい顔をしていた。
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桃 - うぇ!? なんですかこの作品!…………神じゃないですか!! 作者様神ですか!? この神作品を作ってくださって有難うございます!いつまででも更新待ってます! (2018年10月3日 19時) (レス) id: 6ebd955238 (このIDを非表示/違反報告)
蒼井(プロフ) - 主人公とキャラの駆け引きがとっても自分のタイプです!これからも応援しています! (2018年4月3日 22時) (レス) id: 2e9a8055ee (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - これからも頑張ってください! (2018年2月10日 12時) (レス) id: 5460fa1ff4 (このIDを非表示/違反報告)
さらんりちぇ(プロフ) - 総悟大好きなので、すごく面白いです!これからも更新がんばってください! (2018年1月31日 20時) (レス) id: f4f18cc943 (このIDを非表示/違反報告)
インク(プロフ) - 沖田くんオチですか。…沖田くんオチって意外と人気あるんですよねコレが。こんな駄作者な私でも100hitも行けるくらい。沖田くんはやっぱ最高だった。続き待ってます。と言っても最後のセリフは完全に襲う気マンマンだけど。 (2018年1月8日 6時) (レス) id: 2ca11f0d25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2017年10月29日 20時