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「休憩しよっか」
智がバテてる潤に笑いながら声を掛けると、ほっと息を吐いて頷いた。
「疲れたらぁ〜、糖分補給〜」
声が踊っている。
程なくしてコーヒーとケーキがテーブルの上に置かれる。
智は美味しそうにケーキを頬張った。
それからとろりんと目を潤ませ身悶える。
休みの日に都内へ出て行く者はケーキを智に買ってくる。
智の喜ぶ顔を見る為に…
ケーキを堪能した智が徐に立ち上がり寝室に向かった。
暫くして出てくると潤の前に携帯と封筒を２つ置く。
「オーナーから。
店名義の携帯と給料前借り分。
日用品とか買う必要あるだろ。
毎月ちょっとずつ給料から引いてくって。
携帯にはGPSついてるからなるべく電源は切らないでね」
GPS？
「最近はなくなったけどナイト誘拐する勘違い野郎がいるから。
客が金持ってるからプロ雇うんだよ。
だから後、ピアスと奥歯に入れる」
「誘拐されたの？」
思わず智に聞く。
「俺？
俺は２回かな？
厳ついでっかいの５〜６人で力づくでこられた」
………………
「なんもなかったの？」
「なんもなかった……訳ではなかったけど生きてここにいる」
へらりと簡単に言うけれど聞いてるだけで、ぞっとした。
「後々の制裁が怖くて、そんな事する奴いなくなったけど、念の為ね」
「……制裁って？」
「会員抹消。
その理由もHPにアップする。
それだけで周りからの信用はなくなる」
簡単なルールも守れない者……そんな人間を信用する者はいない。
信用がなくなれば取引がなくなる。
そうなれば………自ずと道は決まってしまう。
再び背筋がぞっとする。
それだけの店なのだ、ここは。
そしてそれはスタッフ側にも言える事だ。
客を裏切れない。
生半可な接客は出来ない。
落とす金だけの問題ではなかった。
「だから傷が完全に治ったら護身だけはしっかり身につけような」
にっこりと笑いながら言われて頷くしかない。
自分の身は自分で守らないと……
「何処で習うの？」
「ガーディアンにお願いすればいいよ。
我流の奴もいるけど、武術によっては師範の免許持ってる奴とかいるし。
若干スパルタだけど、しっかり教えてくれるよ。
完全実践用のをね」
笑顔で言ってるが素人には恐ろしい内容だ。
「それと年末年始なんだけど、12月15日から１月15日まである。
その間に引っ越しな。
家具は基本備え付けてあるけど私物の移動しないといけないからね。
潤も色々買わないといけないだろ」
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作者名：蒼羽
| 作成日時：2020年2月10日 8時
