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肩口で小さく頭を横に振る。
「ずっと我が儘聞いて貰ってた。
ごめんね、遅くなって……」
「謝るな。
おまえは悪くない」
囁く声も背中を撫でる手も優しい。
無防備に甘える智はまるで本物の子どものように無垢な表情をしている。
「智……悪いが時間だ」
「うん、ありがとう」
はにかみながら光一の上から降りる。
「潤、すまないが智にスイーツでも食わせて水分補給させといて。
ほっとくと飲まず食わずで寝て次の仕事に入るからさ」
２人の頭をそっと撫でて飛びっきりセクシーなウィンクを残して部屋を出た。
ガラス越しにクイーンの登場を待つ。
程なくして妖艶な微笑みを浮かべクイーンが階段を降りて来る。
ただ頭を下げただけ……
頭を上げる時に前髪をかきあげる……それだけで薫る色香。
「あんなん出来ねぇよ」
溜め息に紛れた小さな小さな呟きだった。
聞こえた瞬間、潤は智を見た。
泣くんじゃないかと思う程の切な気な表情。
自分も今、衝撃を受けたカラーズたち。
そこへ上がるって事はやはり相当なプレッシャーなんだろう。
世界中の強者たちを相手にするのだから……
この小さな体で。
なぜだろう……
……………抱き締めてしまった。
…………
「何やってんの？」
「！？」
雅紀が戻って来ていた。
しかもすぐ近くにいる。
「ナンバーズの控え室にいないから来てみれば……
なんでバグ？
…………てか寝てるし」
智を覗き込んだ雅紀が溜め息とともにぼやく。
……気付かなかった。
そういえば重い。
「智、起きて。
カロリーと水分補給してよ」
肩をゆさゆさ揺すっても起きない。
「もう仕方ないんだから」
そう言って………
………なんなんだ？
どこぞの眠り姫ですか？
毒りんごでも食べましたか？
海で溺れましたか？
ここはねずみが治める夢の国ですか？
「起きた？」
「……ん」
起きたのか……
起きるのか……
「何食べる？」
「がとーしょこら」
「何飲む？」
「こーひー」
英語は話せる筈なのに全部平仮名に聞こえる。
雅紀は潤に智を預けたまま、智の所望品を用意しにいった。
ソファーの前のテーブルに生クリームを添えたガトーショコラとコーヒーがソーサー付きのカップで置かれた。
「智、潤から離れて食べなよ」
抱き締めたままだった。
もそもそと離れて行く。
テーブルの上のケーキを見て……キラリン！
「いっただきまぁ〜す」
一口食べて……ふぁ〜んと笑顔。
「ん〜……うまい」
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作者名：蒼羽
| 作成日時：2020年2月10日 8時
