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「………………………」
呆れて声も出ない……なんて事は本当にあるもんだと、妙に冷静に考えてしまう。
犬や猫は許した。
ちゃんと飼い主を探せるから。
これに飼い主は見つかるのか？
「起きてよ、智。
支度しないといけないでしょ」
「……うるさい」
君には言ってない。
君の横で可愛く寝てる人に言っている。
そもそも君は何故、彼のベッドで寝てるのかな？
しかもあっちこっち包帯巻いて。
顔にもガーゼや包帯。
顔が分かりにくいけど、その自己主張の激しい眉毛は見覚えがある。
「智ってば起きてよ」
「うっせぇ……」
だから君ではない。
起きる気配がないベッドの本来の主。
仕方なく手前でしなくていい返事をする物はほっといて、主を抱え上げる。
Tシャツとパンツ一丁で寝ている人のあどけない寝顔に癒され、本来の目的を忘れそうになる。
気を取り直して抱えたままソファーに座る。
「起きてよ。
支度にあれこれ時間かかるでしょ。
起きないとチューするよ」
「……いいよ」
「起きてんじゃん」
「ふふふ……
そりゃね」
笑いながら猫のようにしなやかに伸びをする。
「ところであれどうしたの？」
寝室の方に視線を向けて問う。
その視線を追い掛けて……合点がいって頷く。
「拾った」
「それはわかってる。
人間拾ってどうすんの？」
「だってさ目の前でぼっこぼこにされてんの見たら助けない？」
「お巡りさん呼んで。
確かにあなたは強いけど万が一怪我なんかしたらオーナーの説教がねちねちねちねち続くよ。
あの人、あなたが説教嫌いなの知ってるから態とやるから」
「ああ……
マジ長いからやだなぁ」
心底嫌そうに眉を寄せる。
「でもさ、金なし宿なしなんだよ」
「誰だかわかってて拾ったの？」
「うん。
松本潤」
「ああ……。
えげつないね。
根刮ぎ持って行かれたんだ」
名前を聞いて納得した。
外資系の大きな会社の社長の息子だ。
乗っ取りにあったと聞いたのは数週間前。
身ぐるみ剥がされたのか？
金なし宿なしって………
ああ〜あ……お坊っちゃまには辛いな。
金で繋がった友情程、薄っぺらいものはない。
「で、どうすんの？」
「試練だねぁ。
俺、住み込みの仕事ってここしか知らないし」
「取り敢えずオーナーには報告しなよ。
部外者勝手に連れ込んだら煩いから」
完全覚醒しているのに膝から降りる気配はない。
「ドクターが連絡してると思うけど……」
「拾った人が報告するの」
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作者名：蒼羽
| 作成日時：2020年2月10日 8時
