５ ズレた日常 ページ5
「……あれ、ここ」
目覚めれば見覚えのある場所。
「俺の部屋？
あれは……夢？
全部、夢なのか？
……そう…だよな。
あんなの現実にある訳ないじゃん」
信じられない夢に気を取り直し気合いを入れて飛び起きる。
何処をどう見ても自分の部屋だ。
あの漆黒に輝く豪華な部屋ではない。
だけど……感じた……ない筈の他人の気配。
……えっ……何……誰！？
次の瞬間、昨日の夢……夢だと思いたい悪夢が蘇る。
だとしたら……
……どうしよう………逃げなきゃ。
……何処へ？
……どうやって？
しかも気配は近付いて来る……扉の向こうまで。
カチャリ……
開かれる音。
その音に反応したのか背中に流れる冷たい何か。
……逃げなきゃ………そう思うのに動かない体。
そして開く扉。
「おはよ、雅紀」
「ほぉえ？」
優しい聞き覚えのある声に体の力が抜ける。
目の前によく知る穏やかで柔らかな笑顔。
「俊介……なんで？」
「事にケリがつくまで護衛に付くよ。
我が君から直々のお達しだし、何より俺自身そうしたいんだ」
……事務所は全員……妖魔。
確かにそう言っていた。
ならばこの親友もまた………妖魔。
「でも、俊介の仕事は？」
「そっちは俺の代役がやるよ。
俺がね、雅紀を護りたいんだ。
後、斗真も雅紀の護衛に付くからね。
見知った人の方がいいでしょ？
任せといて」
「えっ、あっ……ありがとう」
「ううん、気にしなくていいよ。
うちの事務所で唯一の人間だからね、雅紀は」
「へっ？
そうなの？」
「そうなの。
我が君が何故か天使が入って来たって言うから様子見てたんだ。
そしたら彼ら……雅紀を見てた。
君を落とすと天使も事務所止めて追い掛けそうだったから入れたって」
複雑な思いが胸に重く伸し掛る。
天使が自分を見ていたから合格できたのか？
「何より本物の天使より人間の思い描く天使に雅紀の方が近かったからかな。
どうでもいい人間なら天使が関わろうが何だろうが捨て置いだろうからね。
我が君が護りたいと思うだけの物を雅紀は持っているんだよ」
人ならざぬ者……妖魔だと知りはしたものの変わらない彼の笑顔にほっとする。
「雅紀を必ず護るからね」
見知った優しい瞳の中に見知らぬ強い意志を感じる。
「とは言え……妖魔としての力は弱いから君を連れて逃げるのが俺の仕事だよ。
天使と戦うとなると斗真かマネさんの仕事になる」
戦う……そんな言葉などスポーツ以外、自分には無縁だと思っていた。
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蒼羽(プロフ) - みみさん» コメントありがとうございます。妖艶な王様さとさん楽しんでいただけてよかったです。私が書くとほわほわしてしまうので。格好良いさとさん目指しているんですけどね。そう言いつつ格好良いからは少しズレてますが……完読ありがとうございました！ (2021年10月18日 13時) (
レス) id: f9ecf164e6 (このIDを非表示/違反報告)
みみ(プロフ) - 完結お疲れさまでした！面白かったです。妖艶な王を想像するのが楽しかったです！ (2021年10月18日 7時) (レス) @page47 id: 6d225d7753 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼羽
| 作成日時：2021年9月28日 2時
