３１ 眠りの現実 ページ31
漆黒故……先が見えず何処までも続いていそうに思える廊下を歩く一行。
暗闇に慣れて来ると正面に細かな細工を施された扉が見えた。
先頭を歩く翔は迷わず、その扉を押し開いた。
一見重そうに見える扉は音もなく滑らかに開き訪問者を招き入れる。
部屋の奥……黒い光沢のある布で作られた天蓋付きのベットの上に静かに横たわる人影。
４人がその人を覗き込み……………驚愕した。
１人と３人は驚愕する理由こそ同じであったが意味合いが違った。
「これ…大野さん？」
「あ…ああ…これがこの方の本来の姿だ。
変化もできてない」
眠る顔立ちは見知ってはいるが僅かにシャープ。
人と同じ形をしていながら人とは明らかに違う者。
皆の知る柔らかく穏やかな寝顔ではない。
完全に表情はなく青白い肌…唇にも色はなかった。
何より…皮を被っていたかのように人間臭さがない…その人は人形のように見える。
「ちゃんと生きるんだよね？」
尋ねる雅紀の声は震えている。
「唯…眠ってらっしゃいます。
妖魔の死は消滅でございますから……」
形があるから生きている………それだけだった。
「直ぐ…起きるよな？」
和也が眠る智の髪を撫でた。
「本来……太陽の下、生きていける半妖魔をも消滅させる程の光の雨であり矢です。
一身に受けたとあらば王とて………寧ろ眠るだけで済んでいるのが王故なのかもしれません」
「何時……起きるんだ？」
ベッドの横に跪き、智の冷たい手を握り潤が尋ねる。
「それは……わかりません。
数時間なのか数日なのか、或いは数ヶ月か数年になるのか……妖魔の時は人間のそれより遥かに永うございます」
「この国で別の何かに気を取られ……思い出して地上に行けば数年、数十年経ってるなんて事もよくある」
翔が声を固くして言葉を足す。
「そんな………俺、大ちゃんと話せなくなるの？
一緒にスィーツ食べたり飲みに行ったりできなくなるの？
………嫌だよ、嫌だよ、大ちゃん！
起きてよ！
起きてってば！」
妖魔の寿命ならば取るに足らない。
恐らく天使も……
だが人間には辛い現実。
仕事は代役の半妖魔が滞りなく遣り遂げるであろう。
しかし雅紀にとって……代役は代役でしかない。
智本人ではない。
待ち続けて……自分の寿命に間に合わなかったら？
眠ってる間に何十年も過ぎてしまったら唯一の人間である雅紀の寿命は尽きてしまう。
「ちゃんと俺が元気に生きてる間に起きてよ……
このまま終わりなんて嫌だよ」
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蒼羽(プロフ) - みみさん» コメントありがとうございます。妖艶な王様さとさん楽しんでいただけてよかったです。私が書くとほわほわしてしまうので。格好良いさとさん目指しているんですけどね。そう言いつつ格好良いからは少しズレてますが……完読ありがとうございました！ (2021年10月18日 13時) (
レス) id: f9ecf164e6 (このIDを非表示/違反報告)
みみ(プロフ) - 完結お疲れさまでした！面白かったです。妖艶な王を想像するのが楽しかったです！ (2021年10月18日 7時) (レス) @page47 id: 6d225d7753 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼羽
| 作成日時：2021年9月28日 2時
