太宰治と敵討ち ページ9
見つけた。
あの長身、包帯、砂色の外套……太宰治だ。
奴は狭い路地に入っていく。
馬鹿め、今から無惨な姿にされるとも知らずに。
奴を追いかけ、自身も路地に入る。
と。
「やあ、お嬢さん。そんなに熱い視線で見つめないでおくれよ」
！！
バレていたか。
「とぼけるな。中原先輩にした仕打ち、今に後悔させてやる」
銃を取り出し、戦闘態勢をとる。
「君も物好きだねぇ。中也なんかの直属部下やってるなんて。
あ、でも結構ぴったりかもね。身長的に」
「コロス」
「えっ本当？嬉しいなあ」
「黙れそれ以上口をきくな！！」
怒りにまかせて発砲する。
しかし太宰には当たらず、残響だけが虚しく木霊した。
「君の異能は戦闘系じゃないだろう。一人で戦おうとするのは危険だから、やめた方がいい」
私は銃を下ろした。
悔しいが、奴の言う通りだった。
私は大して武器の扱いが上手いわけでもない。
「それに、君に手を出すと中也になにされるかわかったものじゃないもの」
「え」
「え？」
「それは……どういう事だ」
「どういう事も何も、君、中也のお気に入りでしょ？君の事で中也をからかってみたら超怒ってきたし」
私が、中原先輩の、お気に入り……？
いや騙されるな相手はあの太宰治だぞ油断させておいて逃げようと考えているに違いないでももしかしたら本当かもしれないうんその可能性も微レ存だなって何を期待しているんだ私はこれでは相手の思う壺だろうが惑わされるなそう今は太宰に復讐をしなければ――
「…………」
我に帰ると、もう太宰はそこにいなかった。
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作者名：サーモニウム | 作成日時：2018年6月14日 23時
