記憶と夢 ページ11
――ここはどこだろう。
規則正しく並べられた机。
大きな黒板の前には教卓がある。
どうやらどこかの学校のようだ。
どれも同じに見える机の中で、ひとつだけ異質な物があった。
その机の上にあるのは、菊が1輪活けてある花瓶だ。
「近付かないで」
突然聞こえてきた声に驚き振り返ると、そこはもう教室ではなくなっていた。
薄暗い部屋。
壁には何かを書き殴った紙が何枚も貼られている。
棚の上には遺影らしき写真が立ててある。
一体誰の部屋だ?
「気味が悪い」
また知らない声が聞こえ、景色が一変する。
今度は路地裏。
まだ乾いていなさそうな血溜まりができていた。
ズキン、と頭が痛む。
痛みはどんどん大きくなり、ついには意識が遠のく。
「お前さえいなければ」
そう声が聞こえたが、もう景色は変わらなかった。
「――い、おい!」
聞き慣れた声で目が覚める。
ここは……拠点内にある私の部屋だ。
「大丈夫か?魘されてたぞ」
「なっっ中原先輩?!」
え、何?
私は中原先輩に見守られながら寝ていたのか??
なんという僥倖!
「具合が悪いンなら早めに言えよ」
「は、はい、大丈夫です。ところで今は何時で……?」
「夜中の2時」
ということは、まだ仕事の時間ではない。
良かった……。
「明日は午後からだろ?このまま寝とけ」
「ありがとうございます。あ、でも中原先輩は私に用があって来たんじゃないんですか?」
「あー……」
中原先輩は気まずそうに目を泳がせた。
「なんとなく、急に心配になっただけ、だ」
それから翌朝起きるまでの記憶は無い。
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作者名:サーモニウム | 作成日時:2018年6月14日 23時