【闇色翠玉】「妖と月夜」【島左近】 ページ3
「こんばんは…」
「あっ、A!」
静かに襖を開け挨拶をすると、私の名を言い向き直る彼。
彼は左近という。
この方が、私が初めて会った人間だった。
そう、私は人ではない。
妖だ。
森で人の姿になる練習をしていたのを、左近が見つけた。
そして、私は恋に落ちてしまった。
「あの時も、こんな月夜でしたね…」
「そうだな…。ホント綺麗な月だよな」
左近が軽く、自分の隣の床を叩く。
私は左近の隣に座った。
妖でも心はある。
それ故、私は今…胸の高鳴りを抑えられずにいる。
嗚呼、これが、恋…
不意に、手の感触がした。
「また尻尾、出てるぜ?」
言われた瞬間、顔が火照った。
慌てて尻尾をしまうと、左近は残念そうな顔をする。
「あのままでも可愛いからいいけどな〜」
「じ、冗談はよしてください…」
「あはは、ホントだって!マジ可愛い…」
まったく…と、月を見上げる。
一片の曇りもない月を見ると、心が安らぐ…
そのまま、しばらくぼんやりと月を見ていた。
気が付くと、手にぬくもりを感じた。
左近が私の手を包むように置いていた。
私は、左近の指に私の指を絡めた。
―――今宵の月は、まことに綺麗でした。
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