壱話 ページ2
あれは、忘れる事も無い、五年前の事。私が九歳、お兄ちゃんが十一歳の時だった。
私とお兄ちゃんは、今日も野宿する場所を探していた。親に捨てられたので、住むところが無いからだ。それでも私はお兄ちゃんと一緒に居られるだけで幸せだった。
雲行きが少し怪しく、雷の音で雑音がかき消されていた。お兄ちゃんは私の足元で震えながらうずくまる。
「お兄ちゃん、今日はここにする?」
私がお兄ちゃんに話しかけた、その時だった。雷が落ちるのと同時に、私は何者かに羽交い絞めにされて連れていかれた。
「お兄ちゃん!やだ!」
その叫びも虚しく、私とお兄ちゃんはどんどん離れていく。気が付けば、私は古い建物の中で縛られていた。堅く結ばれているため、幼い私の力では当然外れない。どうにか逃げようともがいていると、私を連れ去った犯人...いや、おぞましい姿の怪物が一歩、また一歩と近付いてくる。もう終わりだと思ったその瞬間、怪物の首は地面に転がっていた。怪物の胴体もぐしゃりと倒れる。私の視界に入ったのは、黒い隊服に身を包んだ大柄の男の人だった。
「派手に襲われたみたいだな。」
ニッと笑う彼は、紛れもない、お兄ちゃんからよく聞かされていた、鬼殺隊士だった。安堵のあまり、私の瞳からは涙が零れる。それを慰めるように、彼は涙を拭ってくれた。
「いつまでも地味に泣いてんじゃねぇ。」
そんな風に言いながら縄を解いてくれる。でも、
「じゃあな、早く家帰れよ。」
とだけ言って、私に背を向けて歩き始めた。私に居場所なんて無いのに、お兄ちゃんだってどこにいるか分からないのに。
「待って下さい!...帰るところ、無いんです。」
言ってから後悔した。この人もきっと忙しい事だろう。私みたいに怪物に襲われた人達を助けなくてはならないのだろう。
「えっと...今のは、聞かなかったことに...え?!」
私が言いかけると、身体がふわりと持ち上げられた。突然の出来事に、頭が追い付かない。
「なら、俺ん家来いよ。」
そのいたずらっぽい笑い方をする彼の事を、もっと知りたいと思った。
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ドリーム - シルバーウルフさん» しばらく考えてみたのですが、私には少し難しそうです。折角考えて頂いて申し訳ないのですが、色々と諸事情があるため、そのお話は書けなさそうです。すみませんm(__)mこんな事言っておいてなんですが、これからも読んでいただけると幸いです。 (2021年2月11日 16時) (レス) id: c19869b9be (このIDを非表示/違反報告)
ドリーム - シルバーウルフさん» リクエストありがとうございます!もし万が一他の方のリクエストがあれば、そちらも見て考えたいと思います! (2020年12月25日 21時) (レス) id: c574f6dd30 (このIDを非表示/違反報告)
シルバーウルフ - 人間の姿の時は言葉を喋る。 (2020年12月24日 12時) (レス) id: 769a4deb70 (このIDを非表示/違反報告)
シルバーウルフ - ネコの時の姿は白銀色の毛並みの猫だから、人間の姿の時も白銀色のケモ耳と尻尾がある。名前がないため善逸に名前を付けてもらう。(^ω^)(^o^)v(*^^*) (2020年12月24日 12時) (レス) id: 769a4deb70 (このIDを非表示/違反報告)
シルバーウルフ - 人間の姿にもなれるけど、、、ケモ耳と尻尾がある人間の姿。 (2020年12月24日 12時) (レス) id: 769a4deb70 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ドリーム | 作成日時:2020年9月20日 14時