取引先のお相手 ページ36
Aside
花岡さんにお屋敷の食堂に案内してもらい、坂田様は取引先のお相手……「黒崎光」様と、時折談笑を交えながら昼食をお取りになっていた。
私?
私は坂田様の椅子の後ろに立っているだけ。
あくまでも執事の身ですからね、主人の邪魔にならないように仕えないと。
黒「誰かと食事するんは久しぶりやな〜……あ、急にお呼びして迷惑やなかったかな?そこの執事くんもわざわざごめんな〜」
急に話の矛先がこちらに向いてきて、驚きながらも控えめに言葉を返す。
『いえ、迷惑なんてそんなことは……。お招き頂きありがとうございます』
正確には私じゃなくて、坂田様なのだけれど。
黒崎様はそっかぁ、と笑って、再び坂田様と話を続けた。
その様子を、私と同じく
………なんだろう、ふんわりした人だな、黒崎様って。
でも、その雰囲気とは裏腹に、うちの4兄弟にも負けないぐらいの容姿をお持ちになっている。
無意識に漂わせてる色気なんかは志麻様やセンラ様といい勝負だ。
ああ、坂田様が幼く見える……。
実際、お二人が親しげに会話を交わす様子は兄弟のようだった。
もちろん、坂田様が弟ポジション。
なんて自分でもおかしいと思うような想像を頭の中でぼんやりと繰り広げていると、食事が終わり、坂田様は帰る前に御手洗いに寄りたいと言って、再び花岡さんに案内してもらって行った。
使用人やメイドさんたちが食器を片付け終わってしまうと、やがて沈黙が訪れた。
まぁ無理もない。
食堂には、コミュニケーション力と柔らかい表情筋に乏しい
しかし私は沈黙もあまり気にしないタイプなので、そこのところは割と平気だ。
でも、黒崎様はどうだろう。
ちらりと視線をそちらに向けると、なんと黒崎様は私の方を見ていたのだった。
………って、え?
濡れたように艶やかな瞳と視線がぶつかって、思わず吸い込まれそうになる。
私はなんとか放心した自分を取り戻し、口を開いた。
『……何か御用でしょうか?』
黒「んー……そうやねぇ、」
黒崎様は私の問いに軽く反応しただけで、黙り込んでしまった。
長い睫毛を伏せているその様子は、何かを考え込んでいるようにも見える。
やがて顔を上げたかと思うと、黒崎様は椅子から立ち上がり、こちらに近づいてきた。
驚いて、思わず後ずさる。
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kne(プロフ) - 続き楽しみです。 (2021年9月14日 0時) (レス) id: ee34aec55d (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - リスさん» リスさんなんですね!私はこたぬですが基本的に箱推しです (2021年7月4日 12時) (レス) id: 79c7e82e9a (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - ぱるむさん» お返事が遅くなってしまい申し訳ありません汗 ありがとうございます! 今リメイク版を作成している最中なので、もうしばらくお待ちいただけると嬉しいです (2021年7月4日 12時) (レス) id: 79c7e82e9a (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - ランデブーさん» ありがとうございます!そう言ってもらえてとても嬉しいです (2021年7月4日 12時) (レス) id: 79c7e82e9a (このIDを非表示/違反報告)
リス - 私も志麻リスです! (2021年6月24日 22時) (レス) id: 016461b9aa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:よる | 作成日時:2020年7月30日 16時