紫の優しさ ページ12
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「………誰だ？」
すぐ後ろから地面を這うような低い声がした。
こちらを探るような疑わし気な声音の中に、どこか気遣っているような優しさが隠れている。
それは明らかに私に向けられたもので、私はびくりと肩を震わせた。
だって、それは聞きなれている人の声だったから。
心地いい低音の、数々の女性を魅了してきた男の人の声。
し「誰やって聞いてるんやけど。お前誰？」
声の持ち主は、志麻様だった。
っていうか、なんでこんな時間にこんなところに！？
これはかなりマズい事態なのでは。
だって私今執事の格好じゃないし、執事どころか女の姿だし、それをこの人たちは知らないし、泣いてるし、志麻様から見たら知らない女が自分の屋敷の庭園で泣いてるっていうシュールな絵面だろうし。
………どうしよ。
ああもう、泣いてたから自分の背後まで気にしてなかった、いつもならすぐ気づいてたのに。
やっぱり逃げるしか……でもそれで大事になったら面倒だし………。
と、一人で悶々と考え込んでいると、志麻様にぐいっと腕を引っ張られ、強制的に対面させられる形になってしまった。
志麻様は私の顔を見るとアメジストのようなその瞳を見開く。
げっ、まさか顔でバレた？
逃げようにも、腕を掴まれていて振りほどけない。
くっそ、力だけは強いなこの人！
し「……なんで泣いとるん？」
『あ………』
しまった、そうだった。
慌ててもう片方の手で目をこすろうとすると、それも掴まれて阻止された。
なんで！？
驚いて顔を上げると、こちらを見ていたアメジストの瞳と視線がぶつかった。
その瞳の中に、優しい光がゆっくりと瞬く。
そのまま腕を引っ張られたかと思うと、なんと志麻様の腕の中に抱き寄せられていた。
！！？
びっくりしすぎてもはや言葉にもならない。
思考回路はショート寸前だ。
ぐいっと志麻様の胸板を押してみるけど、それよりも強い力で抱きしめられる。
でも、その力はこちらを労わるように優しくて、それにも驚いた。
し「………誰か知らんし、なんでここにおるのか分からんけど、……ええよ」
え………？
志麻様が、私の頭を抱え込む力を強める。
志麻様の肩に顔を埋める形になってしまった。
耳の近くで、優しさを含んだ低音が響く。
し「泣いても、ええよ」
その一言で、何かが切れたかのようにさっきまで止まっていたはずの涙がどんどん出てきた。
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kne(プロフ) - 続き楽しみです。 (2021年9月14日 0時) (
レス) id: ee34aec55d (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - リスさん» リスさんなんですね！私はこたぬですが基本的に箱推しです (2021年7月4日 12時) (レス) id: 79c7e82e9a (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - ぱるむさん» お返事が遅くなってしまい申し訳ありません汗 ありがとうございます！ 今リメイク版を作成している最中なので、もうしばらくお待ちいただけると嬉しいです (2021年7月4日 12時) (レス) id: 79c7e82e9a (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - ランデブーさん» ありがとうございます！そう言ってもらえてとても嬉しいです (2021年7月4日 12時) (レス) id: 79c7e82e9a (このIDを非表示/違反報告)
リス - 私も志麻リスです！ (2021年6月24日 22時) (レス) id: 016461b9aa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よる | 作成日時：2020年7月30日 16時
