残酷な現実 ページ28
「お、大人しくなったじゃん」
その声に反応して苦しそうな顔で私を見た市橋くんを「お願いだから、どうかここから逃げて」そんな気持ちを伝えようと必死に見つめ返す。
ここから逃げることは出来ないことくらい分かってる。
でもそれでも、市橋くんさえ無事でいてくれたら…それでいい。
「だから黙って見ててくださいって」
だけど、抵抗をやめる訳にはいかない。
…まだどこかで、正樹くんのことを信じたかったのかもしれない。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
「っ、市橋くんが！目を覚ましたって！」
「Aちゃんから市橋くんに渡してあげて」
「…Aちゃんのこと好きになっちゃったからかも」
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
違う、こんなの、正樹くんじゃない。
正樹くんはいつも優しくて、いつも私を助けてくれてた。
…今、市橋くんにナイフを向けているのは、誰？
『っ触らないで、！、市橋くん』
とにかく今すぐに市橋くんをここから逃がさないといけない。
その一心で私は彼の元に向おうとした。
助けられる自信なんて、これっぽっちもない。
でも私が出来る事は、これくらいしかない。
でもそんな私の気持ちとは裏腹に、彼らの手は少しも緩まなかった。
「大人しくしろっつってんだろ」
一瞬の、出来事だった。
ただ分かるのは左頬に感じた痛みだけ。
そしてまたソファーに倒れ込んでしまった。
「おいもう一回バチっとけ」
『やだ、やめて！嫌！やだ！』
また、殴られる。
そう思った私は必死に抵抗した。
でも私の体を押さえつける二人の手はビクともしない。
…きっとこれが、私に与えられた罰なんだ。
自分の気持ちばかり優先して、周りのことなんて何も考えていなかった。
そしてたくさんの人を傷つけた。
そんな私に対する、罰なんだろう。
「やめろ」
「は？何か言いました？」
「頼むから、やめてくれよ」
『やめてよ！やだ！離して！！』
自分を守ることで精一杯だった私は、市橋くんと正樹くんのそんなやり取りが耳に入ることは無かった。
「…もうこれ以上、地獄見せんな」
「はっ？何言ってるか全然聞こえないんすけど」
もちろん、市橋くんの手が正樹くんのナイフを掴んだことに、気付きもしなかった。
…ただ目の前に迫る恐怖から、必死に逃げることしか、できない。
「おい！お、おま、何やってんだよ」
焦ったような正樹くんの声に二人の手が止まるまで、彼に起きた残酷な現実を、知ることもなかった。
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狛犬のリサ(プロフ) - あーあ、やっぱり夢主はトビオじゃなくて市橋かぁ…けっ…作者は最高でドラマも最高だったし…トビオ落ちだったらもっともーっと最高だったのになぁ (2019年1月22日 2時) (
レス) id: 3d96b1b6a9 (このIDを非表示/違反報告)
みい - いつも楽しみにしてます！トビオおち分岐ありがとうございます！トビオと結ばれて欲しいと思ってたので嬉しいです (2017年9月27日 16時) (レス) id: 788e2e4591 (このIDを非表示/違反報告)
はる坊(プロフ) - この前はトビオオチが見たい！とコメントさせていただきましたが、正直私もどっちも見たいです。どちらも書いてくださるというお話すごく嬉しいです！！頑張ってください！！ (2017年9月2日 22時) (レス) id: 0e6de27daf (このIDを非表示/違反報告)
前田ちかね(プロフ) - 市橋くんオチがいいです！ (2017年9月2日 22時) (レス) id: f96c4eb485 (このIDを非表示/違反報告)
emu(プロフ) - 今日の回は昼顔っぽくて面白かったです！めっちゃ好きですこの感じの＞ω＜ (2017年9月2日 1時) (レス) id: 7e03b267ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐伯
| 作成日時：2017年8月8日 18時
