溢れた涙はどこに行く？ ページ29
さっきまでのことが嘘みたいに、時間が一瞬にして止まった。
驚きと焦りの表情を浮かべる正樹くんと、
さっきよりも確実に息を荒らしている市橋くんに、まるでスポットライトが当たったように皆が注目する。
「…矢波高とか、てっぺんとか、もうどうでもいいんだよ俺には」
『…いちは、し、くん』
一体何が起きたんだろう。
分かるのは、正樹くんのナイフを握っていた手が市橋くんのすぐそばにあること。
すぐそばなのかどうかも、はっきりとは分からない。
市橋くんは包帯だらけの左手で正樹くんの頭をグッと引き寄せた。
「やりたきゃ、俺を殺せ」
「っはぁ、はあ…」
「俺はもう終わった人間なんだよ！」
そんな市橋くんの叫びが聞こえた時、彼の口から真っ赤な何かがこぼれ落ちた。
恐怖に怯えた目で市橋くんを見つめる正樹くんは、息を荒らしている。
市橋くんの足下のコンクリートが赤く、黒く、染まっていく。
「ヤベェ、マジかよあいつ」
「お、おい、行くぞ」
フラフラとした足で逃げ出すように走り去っていった正樹くんの後を、二人も追いかけていった。
『、市橋、くん…』
「……」
市橋くんの目がゆっくりと私を捉えた途端、力が抜けたようにガクンと首が落ちた。
そのまま前に倒れそうになる市橋くんに震える足で慌てて駆け寄った。
『っ市橋くん！しっかりして！市橋くん！やだ、やだよ…ねえ市橋くん、起きてよ！』
そんな私の必死な叫びも、彼に届くことはなく消えていく。
…いやだ、いやだ、いやだ。
もう何も失いたくないのに。
もう、大切なものを無くしたくないのに。
私の頬から伝わる涙が市橋くんの制服のズボンに落ちては吸い込まれていった。
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狛犬のリサ(プロフ) - あーあ、やっぱり夢主はトビオじゃなくて市橋かぁ…けっ…作者は最高でドラマも最高だったし…トビオ落ちだったらもっともーっと最高だったのになぁ (2019年1月22日 2時) (
レス) id: 3d96b1b6a9 (このIDを非表示/違反報告)
みい - いつも楽しみにしてます！トビオおち分岐ありがとうございます！トビオと結ばれて欲しいと思ってたので嬉しいです (2017年9月27日 16時) (レス) id: 788e2e4591 (このIDを非表示/違反報告)
はる坊(プロフ) - この前はトビオオチが見たい！とコメントさせていただきましたが、正直私もどっちも見たいです。どちらも書いてくださるというお話すごく嬉しいです！！頑張ってください！！ (2017年9月2日 22時) (レス) id: 0e6de27daf (このIDを非表示/違反報告)
前田ちかね(プロフ) - 市橋くんオチがいいです！ (2017年9月2日 22時) (レス) id: f96c4eb485 (このIDを非表示/違反報告)
emu(プロフ) - 今日の回は昼顔っぽくて面白かったです！めっちゃ好きですこの感じの＞ω＜ (2017年9月2日 1時) (レス) id: 7e03b267ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐伯
| 作成日時：2017年8月8日 18時
