ボロボロの絆創膏 〜第５話ｅｎｄ〜 ページ33
「俺の財布、取って」
『え、あ、うん』
今市橋くんが話すまで、ずっと忘れていた。
まさかあの矢波校生が…市橋くんだったなんて。
市橋くんの真っ黒い財布を手渡すと彼はその中を開けて、ボロボロになった絆創膏が一枚取り出した。
まだ開けられていないまま、残っていたんだ。
『それ、って』
「あの時のやつ」
市橋くんは絆創膏を見つめると、また優しく微笑んだ。
「…誰かに優しくされたの、初めてだった」
『……』
「たった一枚しかなかったけどな」
『、だって一枚しか持ってなかったし…』
「…それでも、嬉しかった」
市橋くんはまた私を見つめると「これが、お前を選んだ理由」と呟いてまた目を逸らしてしまった。
だけど少しだけ赤く染まった耳が市橋くんの気持ちを教えてくれているような、そんな気がする。
「お前の伝えたいことは？」
『ひえ、！？そ、それ、は…』
「…んだよ」
予想外の質問に頭が真っ白になった。
…なんて事を言ってしまったんだろう、私は。
どうにかこの状況から抜け出したい、のに…。
真っ直ぐに見つめられる市橋くんの視線からは逃げられない。
『…っわ、私、市橋くんが、その…』
「…」
意を決して言おう、そう思った私を遮ったのはスカートに入っている携帯の着信音だった。
『っえ、あ、ごめんね。……蓮子？』
「…出ろよ」
『、うん。もしもし蓮子？どうし、』
「A！今市橋と一緒にいる！？」
『うんいるけど、？どうしたの』
「テレビ見て！ニュース！」
慌てたような蓮子の声に急いでテレビを付けた。
たまたま付いたニュースのアナウンサーが発した言葉に、時間が止まった気がした。
「続いて矢波高校爆破事件に関する続報です。真犯人を名乗る男が警察に出頭しました。」
『…え、市橋くん、これって』
何も言わずに険しい顔でテレビを見つめ続ける市橋くんを他所に、私は驚きを隠せなかった。
…もし、増渕くんがなにか行動を起こしたんだとしたら。
背中に冷たい汗が伝った。
「警察は出頭した男を住所不定無職の真中幹男と特定し緊急逮捕しました。」
…増渕くんたちと一緒にいたあの人は、犯人じゃなかった。
増渕くんも、宇佐美くんもマルくんも、事件と関係なかった。
……増渕くんは、犯人じゃ、なかった。
〜 第５話 ｅｎｄ 〜
5話が長くなってしまいましてすみません、、(；_；)
主人公のフラフラした気持ちも優しい目で見ていただけたら幸いです。。
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狛犬のリサ(プロフ) - あーあ、やっぱり夢主はトビオじゃなくて市橋かぁ…けっ…作者は最高でドラマも最高だったし…トビオ落ちだったらもっともーっと最高だったのになぁ (2019年1月22日 2時) (
レス) id: 3d96b1b6a9 (このIDを非表示/違反報告)
みい - いつも楽しみにしてます！トビオおち分岐ありがとうございます！トビオと結ばれて欲しいと思ってたので嬉しいです (2017年9月27日 16時) (レス) id: 788e2e4591 (このIDを非表示/違反報告)
はる坊(プロフ) - この前はトビオオチが見たい！とコメントさせていただきましたが、正直私もどっちも見たいです。どちらも書いてくださるというお話すごく嬉しいです！！頑張ってください！！ (2017年9月2日 22時) (レス) id: 0e6de27daf (このIDを非表示/違反報告)
前田ちかね(プロフ) - 市橋くんオチがいいです！ (2017年9月2日 22時) (レス) id: f96c4eb485 (このIDを非表示/違反報告)
emu(プロフ) - 今日の回は昼顔っぽくて面白かったです！めっちゃ好きですこの感じの＞ω＜ (2017年9月2日 1時) (レス) id: 7e03b267ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐伯
| 作成日時：2017年8月8日 18時
