人見知り窪田とツンデレ彼女

アルコールと 菅田将暉 ページ39

「じゃあ後は若いお二人で」なんて言って賢人は風のように去ってしまった
普通に接してとかなんとか言っていたくせに連絡だってろくに取っていない
窪田さんと付き合ったことで失ったものも、確実にあった


『とりあえず座りなよ』

「…ああうん、そうやな」


何だろうこの変な沈黙は
今までだったらこんな沈黙でさえ気楽に思えていたのに、居心地が悪くて仕方ない


「Aもおるなんか聞いてへんかってんけど」

『わ、私だって将暉が来るなんて、知らなかった』

「なるほどな、賢人にはめられたってことか」


「まぁとりあえず乾杯しようや」とグラスを突き出してくる


『そう、だね』


乾杯という声とともにカチャンとグラスが交わった音がする
口に含んでみても、全く味を感じない
なんなんだろう、これ
自分がバカバカしい


「で、どうなん。窪田さんとは」

『ああ、うん、まあそれなりに』

「冴えへん返事やな」


幸せじゃないわけじゃない
もちろん、幸せ
というか幸せってなに？

窪田さんはああ見えて自分の気持ちを素直に伝えられる人だと思う
好きだってきちんと言葉にしてくれる


「まあ幸せならええわ」


そう呟いて将暉は何かを言いたそうな顔をするとそれをかき消すようにまた喉に飲み物を流し込んだ
そういえば、珍しくアルコールじゃないな


『今日はお酒飲まないの？』

「え？…ああ、長居する気ないからな」

『…え、』

「彼氏おんのに申し訳ないやろ」


おかしい
やっぱりおかしいどう考えても
今までそんな事言ったことなんてなかった
私がこんなこと言える立場じゃないことくらい分かっているけど


……なんか寂しい

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