第50話 ページ1
鬼道の、「敵はここまでするのか」という言葉を聞いた明日人は、訳が分からないといった表情で彼の方を見た。
「行動を起こすべき時があるんだ。大切な者を守るためにはな。」
鬼道は、静かに、しかしはっきりとした声でそう言った。
それでも、明日人の疑問は取り除かれなかった。
「でも、一体何が起きているんですか！？」
そう問うた明日人に、鬼道は口調を強めこう続けた。
「全てはチームを守るためだ。
…坂野上、お前の仇は俺たちが取る。」
その声は怒りに満ちていた。仲間を傷つけられた絶対指導者の怒りは、静かだがとても強い物に感じられた。
背を向けた鬼道に、坂野上が「待ってください！」と声を掛けた。
「…俺にやらせて下さい。」
そして、彼はゆっくりとAの方に視線を向けた。
Aはこちらから顔を背けており、やや俯き加減だったため、その表情は見事な蘇芳色の髪に隠れて見ることが出来なかった。
「…貴方は一体何者なんですか？」
ついさっき、彼女が自分に掛けてきた言葉を思い出しながら、坂野上は小さく呟いた。
「どうした？坂野上」
そんな彼に明日人が話しかけるが、彼は「いえ、何でもありません」と言い、弱々しく笑った。
・
悲しい。苦しい。悔しい。
とても、見ていられない。
あんな、無垢で可愛い子にあそこまでする必要があったのか。いや、あるはず無い。
分かり切っていたことなのに、どうしてこんなにも胸が痛むのか。私は、こんなに弱かっただろうか。
地獄だ。このフィールドは地獄だ。
彼らと共に、私も地獄に堕ちていく。
でも、忘れてはいけない。
彼らは被害者で、私は加害者だということを…。
「A」
独り、罪悪感と虚しさの海に溺れていた彼女の名前を、一星充が呼んだ。彼は彼女の顔をじっと見つめると、険しい表情でこう言った。
「情なんて捨ててしまえ。あいつらは敵だ。
お前に酷いことをした。当然の報いだ」
冷酷な言葉を投げかける彼に、Aはふっと微笑んだ。そして、彼の耳元で囁いた。
「それは、私から貴方への言葉だわ」
一星は一瞬目を見開いたが、すぐに彼女と距離を取ると背を向けた。
「俺には、あいつらにやる情なんてない。」
たった一言、そう残して彼はその場を後にした。
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エル(プロフ) - 名無しのりんごさん» わあ、ありがとうございます！そう言ってもらえると励みになります^_^更新頑張りますのでこれからも宜しくお願いします！ (2019年12月23日 17時) (
レス) id: 399e3550ff (このIDを非表示/違反報告)
名無しのりんご - 面白いですね。綺麗な表現がたくさんあって素敵です。頑張ってください！ (2019年12月23日 1時) (レス) id: 694c2bbe46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ニーナ | 作成日時：2019年11月16日 12時
